「伊吹本」にて個人的にかなり衝撃的だったのが被害者の日記です。一応、狭山事件の公判調書類には一通り目を通していたつもりだったのですが、上告趣意書に詳しく被害者の日記の内容が書かれているというのは見落としていました。自らの不明を恥じると共に、きっちりと資料を読み込んでおられる伊吹氏の姿勢には頭が下がります。
本日の画像は、そこからたどっていって確認した、「女性自身」昭和38年5月20日号に掲載された被害者の日記です。
「伊吹本」にて個人的にかなり衝撃的だったのが被害者の日記です。一応、狭山事件の公判調書類には一通り目を通していたつもりだったのですが、上告趣意書に詳しく被害者の日記の内容が書かれているというのは見落としていました。自らの不明を恥じると共に、きっちりと資料を読み込んでおられる伊吹氏の姿勢には頭が下がります。
本日の画像は、そこからたどっていって確認した、「女性自身」昭和38年5月20日号に掲載された被害者の日記です。
「伊吹本」発刊記念現地見分に参加しました。
当日は狭山事件調査前線基地にてのささやかな発刊記念会合にも参加させていただきました。席上、伊吹本で発覚した新事実に対するさまざまな考察が飛び交い、大変有意義な会合でした。また次回を楽しみにしています。
ちなみに、席上、伊吹氏本人より、「在庫はあるが、流通の関係で書店店頭やインターネット販売にまだ数が出ていない。それが価格高騰につながっているようでもあるので、出版元や取次に早急に配本するように促す」という趣旨のお話がありました。したがって、ここしばらくのAmazonをはじめとする古本市場での異常な高騰は、そのうち是正されると思います。
狭山事件の真犯人を推理する上で、最低限説明しなくてはならない4つのポイントがあります。
その他にも、殺害方法など一般的に殺人事件において問題とされる様々な問題についても説明する必要はあります。しかし、上記の4点が「狭山事件の真犯人」の推理で最も重要なポイントであることは議論の余地がないでしょう。
これらの中で最も重要なポイントは何かというと、実は三番目の「さのヤに来たのは誰か」という点に集約されると思います。この時点で真犯人(複数犯であれば一味のうちの誰か(複数の可能性もあり))が刑札の包囲の真ん中に姿を現し、悠々と逃げおおせたのは確実な事実と思われ、それをどう解釈するかで、狭山事件に関する全体の推理もほぼ決まってきます。逆に言えば、さのヤの件から想定される犯人像とつじつまを合わせるために他の3点を何とか説明するというのがこれまでの狭山事件推理の主流的な手法で、でもすべては説明できずに謎が残るという結果になっていると思います。
(注記)こう書くと「従来の手法を否定している」と取られるかも知れませんが、私(管理人)もそれがまっとうな推理の手順だと思いますし、限定された情報の中で謎が残るのもやむを得ないと考えています。
伊吹本で新たに判明した事実に基づいて、本ブログの記事もかなり大幅な書き換えが必要になっています。重要なところから順次対応していきますが、取り急ぎ重要度と要変更点の多さから「被害者の家族」の項目に手を入れました。
本日の画像は、上記「被害者の家族」に関連して、裁判の中で被害者と次姉が「腹違い」ではなかったかという話が弁護士から出たところです。ご覧いただける通り、この話はかなり唐突に持ち出されてきていて、なおかつ根拠が示されていません。なぜ石川さんの弁護団がこの話を法廷で持ち出してきたのか、今となっては判然としません。
本日の画像の中のやりとりではもう一つ、昭和39年の初夏、次姉が自殺する前には長兄が秋に結婚することが決まっていたという話が出ています。私がこの辺で持ち出した、「被害者宅の女手がないことが次姉の自殺理由の一つではないか」という話はこの内容からも否定されると思います。
かなり時間がかかりましたが、ようやくアマゾンにも登場しました。
再版になった場合でもかなり手が入ると思われますので、今のうちに是非。
3月14日追記:と思ったらあっという間に在庫なしになっちゃいました。売り切れかな?
3月15日追記:出品しているのは今のところ1店舗だけですが、アマゾンの中古市場がえらい高騰しているようです。個人的には本の内容からすればこの価格でも高くはないと思います。実際、私は甲斐本をこのくらいの値段で買いましたから(笑)。しかし、伊吹氏ご本人の言葉でも再版を考えているという話がありましたので、明日中に読まないと死んじゃうという方以外は再版を待った方がいいかもしれません。ただし、同じくご本人より再版になる場合には仮名化などかなり手を入れたいというご意向もあるようなので、初版がほしい場合には今のうちに店頭在庫を探すか、多少高くても早めに古本市場をあさった方がいいかもしれません。
無事手元に届き、一通り読了しました。感想としては、現時点で最もお勧めできる狭山事件入門書、と言えると思います。
目を見張るような斬新な推理や驚くような新発見があるわけではありません。一つ一つの事実を丹念に追いかけ、対立する事実がある場合にはそれも示しながら現時点で最も妥当と思われる内容を叙述している、そういう本です。
著者ご本人による「お詫び」が発表されており、確かに表紙に関してはどうも狭山の農家のイメージではありません。しかし、内容に関して、少なくともさらっと読んだ感じでは大きく気になるような校正ミスや仮名のミスは感じませんでした。
驚くような新発見はないと書きましたが、それでも今回初めて明らかになったことはいくつかあります。例えば、被害者宅の長姉は事件の前年に家を出たというのが通説でしたが、長姉が働いていたクリーニング店店主へのインタビューにより、実際にはもっと前、長姉が18歳か19歳の時(次姉が中学校を卒業してすぐ)に家を出ていたことが判明しています。長姉の家出・四女の殺害(狭山事件)・次姉の自殺が相次いだことを根拠に、被害者宅に関して何か問題があり、そのためにこれらの事項が連続して起きたのではないかという議論がなされることがありますが、長姉が家を出たのは実際には事件の8~9年前ということになると、それは狭山事件とは無関係ということで決着がつくのではないかと思います。
下田本は、従来の本、特に、亀井本に書かれているかなり眉唾物の内容についてもほぼ「事実」として記述してしまっていました。今回の伊吹本では、従来「通説」とされてきたこともいちいち検証し、疑問がある内容については修正あるいは批判的に記述されていますので、これから狭山事件に興味を持って調べようという方には最適と思います。
ただ、後半部分は初心者にはかなり歯ごたえがあるというか、前提になる議論を知らないとわかりにくい部分もあるかと思います。わからないことがあれば、ご質問をいただければ私(管理人)がわかる範囲はお答えしようと思います。また、著者の伊吹氏自身もこのブログは見ていただいているようなので、必要に応じて伊吹氏自身にも確認させていただきたいと考えています。
この本に関する問題は、値段(笑)と、出版社が小さいのでかなり大きな書店でないと置いていないという点でしょうか。現時点ではまだアマゾンにも出ていませんが、お近くの書店で取り寄せるか、版元に直接発注するか、ジュンク堂通販で購入できます。
石川さんの裁判で主任弁護士を務めた中田直人弁護士が、2月3日にお亡くなりになっていたことをついさっき知りました。
ニュースでは、[[松川事件]](『下山事件全研究』で有名な佐藤一さんが疑われ、結局無罪になった事件)や[[布川事件]]の弁護を担当したことには言及されていても、なぜか狭山事件の主任弁護士をされていたことはほぼ全部のマスコミがスルーでした。
こちらのブログに、中田弁護士の狭山事件裁判における主任弁護士としての歴史がまとめられています。その後、共産党推薦(無所属)で茨城県知事選挙に出馬されたりしていたようです。
最終的に、二審判決(寺尾判決)後、裁判とは関係ない党利党略の話から同僚の7人の弁護士と共に狭山事件裁判から手を引かざるを得ない状況になったとはいえ、渋る検察・裁判所からいくつかの証拠を開示させたことなど、その貢献を疑う人はいないでしょう。
これでまた当時を直接ご存じの方が他界されてしまったわけで、ご存命の関係者がいらっしゃる今が、狭山事件の真実を解き明かす最後のチャンスなのかもしれません。
謹んでお悔やみを申し上げます。
前回のエントリを書く際に検索していて、『滅びの遺伝子―山一證券興亡百年史 (文春文庫)』の文庫版が出版されているのに気がつきました。
この本の単行本も労作でしたが、文庫本はかなりの部分が追加の取材や資料に基づいて書き直されて、ほぼ書き下ろしと言ってもよい内容になっており、山一破綻に関する資料としては社内調査報告書と並んでもっとも包括的かつ信頼できる資料と思います。著者は冒頭で「以下は私の仮説である」と書き始めていますが、その仮説を構築するために積み重ねた資料と直接取材の量は、単なる仮説を超えて十分な説得力をこの本に与えることに成功していると思います。
文庫本版で、バブル崩壊から山一破綻に関する叙述は398ページから428ページまでの30ページ程度、全体で400ページを超えるこの本の中で1割にも満たない量です。しかし、その叙述は、他のどんな本よりも雄弁に「山一が崩壊した理由」を描写しています。
いずれにしても、昨今の金融危機の中で、前回の金融危機で破綻した「山一證券」という存在に興味がある方には必読の本だと思います。Wikipediaの山一證券の項目も、この文庫本の出版によって全面改訂が必要になっていると思います。私(管理人)はもうWikipediaには書かないと決めたので書きませんけど(笑)。
今回のエントリも事件とは関係ありません。ただし、経済事件という意味ではちょっと関係があります。
私(管理人)は以前、Wikipediaにいろいろな記事を投稿していました。最近はいわゆる「削除厨」とか「要出典厨」と呼ばれる方々のご活躍に嫌気がさしたので投稿をやめていますが。そのWikipediaの中で、私がほとんどの部分を書いた記事に山一證券があります。
だいぶ以前になりますが、そのWikipediaの山一證券の記事と非常に共通点が多い記事を週刊新潮で見かけたことがあります。[[野口悠紀雄]]氏による「戦時体制いまだ終わらず」という記事でした(週刊新潮2007年4月26日号、本日の画像)。「共通点が多い」というだけではどういうことかわかりにくいと思いますので、以下に比較表をあげておきます。比較対象にしたWikipediaの記事は、確実に当該の週刊新潮の記事より前の、2007年3月8日の版にしています。