足利事件のDNA鑑定について、「インサイドアウト脳生活。」さんにて専門家による解説がなされています。
さすがに専門家だけあって、わかりやすく詳細な内容です。この手の科学の話は、妙に一部分だけ引用するとその部分だけが文脈から離れて一人歩きしてしまう危険もありますので、是非ともリンク先で原文をお読み下さい。「DNA鑑定」の実際がよくわかります。
ただし、「後編」の最後から2番目の段落(「冤罪の確率」)に関してはあまり賛同できません。当時の技術的限界によって誤判定が生まれ、そのために結果的に冤罪となってしまったのであれば誰も何も非難しないでしょう。足利事件で非難されるべきなのは、検察・警察が当時のDNA鑑定の科学的限界を承知した上で、DNA鑑定装置の予算を確保するために故意に菅家さんを冤罪に陥れた点にあると思います。
「検察や警察がそのようなことをするはずがない。妄想に決まっている」という方は、下記の時間経過をご覧下さい。
1990年5月12日 |
足利市内でMちゃんが行方不明に。翌日遺体発見。 |
11月 |
菅家さんを警察がマーク開始 |
1991年8月21日 |
菅家さんの捨てたゴミ(を無断で警察が回収しもの)にあった精液を大阪府警科警研にDNA鑑定依頼 |
8月28日 |
警察庁がDNA鑑定機器を全国へ導入するための概算要求 |
12月1日 |
菅家さんを任意同行。同日、DNA鑑定の結果を突きつけられた菅家さんが「自白」 |
12月26日 |
DNA鑑定機器導入が復活折衝で認められる |
(この時系列は雑誌「冤罪File」 No.03より引用しました)
結局のところ、足利事件は、警察や検察の担当者がたかだか1億円程度の予算を確保するために故意に引き起こした冤罪事件であると私(当ブログ管理人)は判断しています。
そして、その目的のためにマスコミを利用するのが警察や検察のいつもの「手」であり、マスコミも嬉々としてそれに積極的に荷担してきたことは、下記のエントリで確認したとおりです。「100万人から1人を絞り込む能力」「スゴ腕DNA鑑定」などという明らかに実態にそぐわないキャッチフレーズは、どう考えてもマスコミの独自取材ではなく、警察や検察が記者に話したことを無検証・無批判で掲載しただけでしょう。
実は、これは今(2010年1月)問題になっている小沢一郎氏の政治資金問題と同じ流れです。小沢氏周辺が取り調べを受けていることを「国策捜査だ」と言っている人や政党がありますが、アホかと。あれは明らかに検察という一組織が可視化法案潰しのためにやっている組織防衛行動であって、「国策」などではないと思います。
念のために書いておくと、私は小沢氏が無実だとか小沢氏を逮捕するべきではないと言っているわけではありません。その辺は実際に証拠があるならどんどんやるべきでしょう。しかし、その捜査に検察を駆り立てている動機は明らかに可視化法案潰しであり、そのために最も効果的であろう小沢氏を狙い、さらにはいつものようにマスコミを使って世論形成を図っていると私は考えています。
この辺は長くなりそうなのでまた改めて。