その他: 冤罪は誰が作るのか その1

asahi-911203朝日新聞 平成3年12月3日付朝刊

前回のエントリにて、菅家さんのを作る、少なくとも片棒を担いだのはマスコミであることを指摘しました。今日はその確認です。

上の朝日新聞では、DNA鑑定を無条件で持ち上げています。

  • スゴ腕 DNA鑑定
  • 100万人から1人絞り込む能力

警察発表を鵜呑みにした検証全くなしのトバシ記事です。それでもここまで断言されてしまうと、見出しだけ見た人は「DNA鑑定ってすごいんだ」「DNA鑑定で100万分の1の確率で本人と判定されたんだから犯人に間違いない」と思うでしょう。
細かい説明は抜きにしますが、警察側の発表でも、当時使っていたDNA鑑定方法による菅家さんと同じ型のDNA型の出現比率は0.83%と、ほとんど1%=100人に1人のオーダーでしか絞り込みができないものでした。「100万人に1人」と「100人に1人」ではえらい違いです。当時17万人の人口があった足利市で、100万人に1人であればまず間違いなくそれだけで犯人ですが、100人に1人では同じDNA型の人間が市内だけで数百人いることになるわけで、それだけでは犯人とは特定できないことになります。しかも、最終的にその菅家さんのDNA型そのものが間違っていたわけですから、まさに何をか言わんや、です。

そもそも、記事本文では

血液鑑定と併用すれば、百万人の中から一人を絞り込むことも可能とされ

と書かれており、この時点で記者としても「100万人に1人」というのは単なる将来の可能性であったこと、しかもDNA鑑定単体ではなく、血液鑑定と併用した場合の数値であることを明らかに認識しています。にもかかわらず見出しでは既に確立された技術のように断言し、ミスリードする。この記事を書いた記者は、菅家さんの冤罪の何%かに荷担した責任を感じたことはあるでしょうか?

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