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津山事件: 津山事件報告書 その2 筑波本との比較について

一通り『津山事件報告書』を読んだところ、筑波本: 『津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)』に掲載されていた下記の内容は報告書には記載されていないことを確認しました。ただし、以下の内容は今後読み込んでいく中で予告なく変更・修正・追加する可能性があります。あらかじめご了承下さい。

  • 姉の証言: 報告書には、姉の証言は筑波本の一番最初に出ている刑札に対する証言(「私は都井睦雄の実姉であります」で始まるもの)だけしか掲載されていません
  • 「内山寿」関係: 報告書に掲載されているのは睦雄が内山寿に連れられて津山の売笑宿に登楼したという内容数行だけで、大阪で阿部定のいた住吉アパートに行ったとか、会話の内容はありません
  • 阿部定関係: 報告書には、阿部定に関することは全く出てきません
  • 雄図海王丸: 報告書にはタイトルも出てきません。ただし、この件に関しては筑波本に原稿の写真もあり、筑波氏の独自取材によるものであることはほぼ確実と思われます

特に、姉の話として紹介されているエピソードのほぼすべてが報告書には掲載されていないという事実は、今後津山事件ならびに都井睦雄の言動を論ずる上でかなり重要なことであると思います。ただし、筑波氏が執筆当時まだご存命だった姉に取材して書いたという可能性もありますので、さらに確認が必要とは思います。

一例を挙げると、この辺のエントリここでも論じた、中学進学に関するおばやんと睦雄と姉の会話は報告書には出てきません。岡山一中と二中のケンカのニュースを聞いて、「ほれみい。こないな学校さ往なんでよかったじゃろが」とおばやんが言った話もありません。報告書にあるのは、高等小学校の担任教師が「上の学校に行ってみないか」と言った話だけです。

一級下の武井孝子という少女の絵を描いて云々という話も出てきません。報告書には小学校時代の担任教師のコメント一覧もありますが、そこには一般的な性格や勉強に関することだけで個別のエピソードは出てきません。

また、内山寿関係については、筑波本にちらっと出てくる浅草で窃盗で捕まった際の「陳述書」が実在してそれが元になっている可能性もあります。ただし、内容に矛盾も多いので、これも筑波氏の創作である可能性は低くないと個人的に考えています。

以前から筑波本には筑波昭氏自身の創作にかかる部分が多いのではないかと個人的に思っていました。とりあえず、『狭山事件報告書』には掲載されていない部分が多いという事実だけ、ご報告します。

津山事件に関する本はこちら

 

津山事件: 津山事件報告書 その1

IMG_1887津山事件報告書 司法省刑事局編

あらかじめお断りしておくと、今回は釣りではありません。

事件の直後に作成された『津山事件報告書』をとうとう閲覧することができました。証拠として表紙の写真を掲載しておきます。筑波本(ハードカバー版: 『津山三十人殺し―村の秀才青年はなぜ凶行に及んだか』)のグラビアにある「津山事件報告書」の表紙と見比べると、筑波本で黒塗りされていたのは通し番号であったことがわかります。

閲覧できたのは日本国内ではありません。ググればすぐにどこかわかるとは思いますが、はっきりした場所を書くのは差し控えます。公開したところでこの場所にマニアがわらわら来るようなことにはならないとは思いますが、あまり迷惑がかかってもいけないので。ここにたどり着くまでの四方山話も後ほど。

世の中の津山事件本の総元締めと言える筑波本も、基本的にはこの本の引き写しの部分が多いことが閲覧してわかりました。驚いたことに、筑波本の250ページあたりから掲載されている被害者の家の見取り図は、ほぼこの「報告書」にあったものののコピー(名前だけ仮名にしてある)でした。また、おそらくは、松本清張の「闇を駆ける猟銃」もこれを参照しています。

「報告書」と銘打ちながら、全部で500ページ近くある大部の本になっており、旧カナ旧字体であることもあって、読み込んでいくとそれだけで1週間くらいかかりそうです。いろいろな点で面白くて、書き始めると100本くらいこの本をネタにブログを書けそうな勢いでもあります。

今まだ海外にいること、泊まっているホテルのインターネット接続が安定しないこと、さらには報告書を読むだけでかなり時間がかかりそうなことから、とりあえずご報告だけアップして詳細は帰国してから改めてご紹介します。

津山事件に関する本はこちら

 

その他: 日垣隆という人

twitterを始めてまだ1週間もたっていないのに、いろいろと面白いものを見せていただきました。以下、事件とは無関係ですがまとめておきます。

twitterにはRT (ReTweet)という機能があります。他人のつぶやきを引用して自分のコメントを付けたり、あるいは面白いと思ったつぶやきをそのまま流したり、ということができます。で、他の方がつぶやいた

「フリー」「フリー」と騒ぐけれど、日本ではそのトップランナーともいえる「R25」が、今や大苦戦。昨年の11月には50万部減。今年一杯もつか。

という内容に対して、私(当ブログ管理人)が

フリーペーパーの判断基準は部数じゃなくて広告費。いずれにしてもR25が廃刊寸前なのは同じだけどw

と書いたのがコトの発端です。

そこからのやりとりは、外部にまとめてくださったサイトがあるので、下記のリンクをご参照下さい。
「とてつもなく日本」
(注)リンク先で、赤字が私の発言、オレンジが相手の発言です。

私としては、なぜフリーペーパーを部数を基準に論じても意味がないのか、懇切丁寧にご説明したつもりでした。それに対して先方からいただいたご返事は

これまた何を、おっしゃってあそばせか。地球一周して出なおしてこいよ。さらばじゃ、幼稚園坊主。

何言ってんだ、こいつ。園児か。日本のヘボ教育の犠牲者またひとり。嗚呼。

という、一方的なレッテル貼り&罵詈雑言でした。

別に阿諛追従や同意を求めているわけではありません。きちんとした反論は大歓迎です。しかし、そういうのをすっ飛ばしていきなり園児呼ばわりですから、かなり面食らいました。

「なんなんだこの人」と思って相手を確認してみると、日垣隆氏という「文筆家」の方でした。その時点では、売り言葉に買い言葉でこちらもイヤミを書きましたし、「まあ忙しいだろうし、こちらの書いてること読んでないんだろうなあ。こういう芸風なんだろう」と、そのまま終わりにするつもりでした。

ところが、今日になって上の「とてつもなく日本」にやりとりを転載していただいているのに気がついて読み返してみると、

日垣隆氏が、私に対する罵倒のつぶやきだけを削除していることに気がつきました。

念のため、日垣氏が削除したつぶやき(内容は、上に引用した園児呼ばわりの罵声)のURLを書いておきます。

このURLが私の捏造ではなく、日垣氏が一方的に削除したものであることは、「とてつもなく日本」にも同じURLが書かれていることでわかると思います。

これでかなり頭に来ました。対話をしている他人(上のリンク先のまとめを読んでいただけるとわかりますが、「論争」にすらなっていません。当方としては普通に「対話」をしていたつもりです)をいきなり罵倒するのはいいでしょう。ご本人が「そういう人だ」と周囲に思われるだけですから。しかし、いやしくも売文を生業とするお方が、いったん自分が書いたことを一方的に削除するのはいかがなものかと。

とりあえず、客観的事実だけ淡々とまとめておきます。

  • 日垣隆氏は、普通に対話をしている相手にいきなり「幼稚園児」などと一方的にレッテル貼りをして罵倒する方です。
  • 日垣隆氏は、都合が悪くなると自分自身の発言を一方的に削除して、恬然として恥じない方です。

私は文筆業ではありませんが、それでも余程のこと(例えば裁判所から削除命令が来るとか)がない限り、自分の発言を無断で削除するような無責任なことはしたくない、と常々考えております。おそらくは日垣隆氏は全く異なる価値基準をお持ちなのでしょう。

その他: あけおめ

IMG_1669今更等身大ガンダム

あけましておめでとうございます。

とりあえず時候のご挨拶だけ。写真は今更ですが去年お台場で公開されていた等身大ガンダムです。

あと、Twitterはじめました。PCで本ブログをご覧になっている方は、右側のメニューの下の方にTwitterのブログパーツを置いたので見てみてください。こちらは事件関係の話ではなく、日常の雑感が多くなると思います。

狭山事件: 東京高裁が東京高検に証拠開示勧告

とりあえず速報です。

本日(12月16日)の三者協議で、とうとう東京高裁が東京高検に対して証拠開示勧告を行ったとのことです。あくまで法的な拘束力はないとのことですが、是非とも迅速な開示ならびに再審開始をお願いしたいところです。

津山事件: アルネ津山問題

しばらく更新できそうにないと書いた舌の根も乾かないうちの新エントリですいません。

「アルネ津山問題」というのが存在することを先日初めて知りました。

津山市の中心部に存在している総合商業・文化施設「アルネ津山」について、税金の無駄遣いだからヤメろという話があり、2005~2006年の市長リコールと出直し選挙はそのあたりが争点だったようです。

そのへんの政治的なお話しは、地元住人ではない私(本ブログ管理人)にはよくわかりません。しかし、個人的に2005年くらいから津山事件の調査を本格的に始めたこともあって、アルネ津山問題には共感できる部分もあります。アルネ津山は津山市の中心にある商店街のアーケードと続いています。商店街の駐車場にレンタカーを駐めてアルネ津山にある図書館へ歩いていく最中に、地方都市によくあるシャッター商店街を実感しました。インター近くにあるジャスコや、さらに郊外のホームセンター・スーパーの盛況も見ていますので、市の中心部に税金を投入してデパートを誘致するというやり方の有効性にはかなり疑問を感じたことも確かです。アルネ津山は隣接して音楽文化ホールも抱えており、私が訪問したときも地元の高校の音楽部による発表会が組まれていました。単純に商業的・経済的な問題だけを語るのは間違いかもしれません。しかし、結局のところ、よく言われる「ハコモノ」だけ作って中身のソフトをないがしろにしたツケが、ここでも「アルネ津山問題」として噴出しているのではないかと感じました。

ここで一つ提言です。現時点で、津山市近辺に津山事件に関する常設展示は存在していません。「八つ墓村」という大ヒット映画の題材にもなったこの事件を観光資源として活用しないのは、あまりにも「もったいない」と考えます。例えば、アルネ津山の中にある津山市立図書館にコーナーを設けるとか、加茂町歴史民俗資料館に常設展示を作るとか、その程度でもある程度の誘客効果はあるでしょう。常設までいかなくても、大手旅行代理店とタイアップして「津山事件ツアー」を組めば、それなりの誘客効果はあると思います。洋学博物館やその他の津山市として売り込みたいものと組み合わせて、例えば「津山ホルモンうどんと津山事件を訪問する2日間」でもいいと思います。

「このような凄惨な事件を見せ物にするのか」という遺族感情から来る反対意見はあるでしょう。しかし、このような凄惨な事件(私が知る限り、世界でもトップ5に入る大量殺人事件です)だからこそ、現代にも通じる教訓や、現代人にも共感できる部分があると思います。

「負の世界遺産」というものがあります。広島の原爆ドームや、アウシュビッツの収容所など、人類がこの世に引き起こした悲惨さを後世に伝えるために「世界遺産」に指定されたものです。津山事件に関しても、内容に充分配慮する必要はありますが、地元に相応の利益を配分しつつ観光資源化する方法はあるのではないかと考えます。関係各位のご検討をいただけると幸いです。

狭山事件: 緊急市民集会(速報)

sayamashuukai狭山事件の再審を求める市民集会

11月27日(金)、「狭山事件の再審を求める市民集会 ~ 検察官の証拠隠しは許されない!東京高裁は開示勧告を!証拠開示と事実調べを求める緊急集会」が日比谷野外音楽堂で開催されました。

仕事の合間だったので全ての内容を聞くことはできませんでしたが、狭山事件弁護団主任弁護人である中山武敏弁護士の報告などがありましたので、取り急ぎ速報として上げておきます。

中山弁護士の報告内容は、概略下記の通りです。

  1. 10月30日に東京高検から、証拠の開示について不同意という意見書が提出された。
  2. 次回の三者協議(裁判所・検察・弁護団)は12月に予定されているので、引き続き検察に証拠開示を求めるとともに、裁判所からも証拠開示勧告を引き出すよう努力していきたい。
  3. 証拠の存在・不存在についてすら回答できないという内容だった。
  4. 唯一、「殺害現場」(検察・刑札が殺害現場とした雑木林)のルミノール検査報告書については「不存在」と回答してきた。しかし、「現場」のルミノール反応検査を行い、報告書を作成したという埼玉県警鑑識課員(当時)の証言もあり、「不存在」だけでは納得できない。現在存在していないのであれば報告書はどこへ行ってしまったのか。破棄したのであれば、いつ、誰の責任において破棄したのかを明らかにしていきたい。
  5. 裁判所は今回協力的であるので、今後協力して証拠開示・再審への道を開いていきたい。

席上でも話がありましたが、検察が税金を使って捜査権を持って捜査を行うのは、容疑者を有罪にすることが目的ではなく、あくまでも真実に近づき、社会正義を実現することが目的であるはずです。弁護士からの請求に対して、証拠があたかも検察の所有物であるかのように、開示するかどうかを検察が判断すること自体がおかしな話だと思います。もし開示した結果を弁護士が悪用するようなら、それを罰する法律を作れば済む話でしょう。

また、民主党・松野信夫議員の話の中で、いわゆる取り調べ「可視化」法案には、「可視化」だけではなく検察による証拠開示の義務づけも含まれていることを知りました。個人的に「可視化」の効果にはかなり懐疑的なのですが、証拠開示義務づけの法制化に関しては是非とも実現してほしいと考えます。

11月30日追記: 当日、参加者の方々の高齢化が進んでいるように見受けられたのがちょっと気になりました。私も、世間一般的には、もう若くないさと君に言い訳するような年齢(というネタで年齢がバレそうですね)ですが、見回したところ参加者の中では一番若い部類に属するようでした。
石川さんもお元気ですがもう70歳を超えていらっしゃいます。裁判所と検察には、メンツを超えて早期に正常な対応を行うことを望みます。



狭山事件: 東京高検が証拠開示を拒否

こちらのHPによると、先般行われた三者協議で証拠開示の要請を受けた東京高検が、「証拠開示には応じられない」と弁護団ならびに裁判所に対して回答したとのことです。

他でまだ報道されていないので確定ではないかもしれませんが、もしこれが事実とすれば、東京高検は何を考えているのでしょうか。

私(本ブログ管理人)は以前から個人的に「狭山事件の真犯人グループには刑札関係者がいたのではないか」と考えています。ここまで頑なに東京高検が証拠開示を拒否するということは、残された証拠の中に

  1. 刑札関係者の関与を決定づけるものが含まれている
  2. 刑札による証拠捏造の決定的な証拠がある

のいずれかとしか考えられません。

11月27日の緊急集会にも参加したいのですが、さすがに月末の金曜日なので難しそうです。引き続きこの問題については見守っていきたいと思います。