Tag Archives: 証拠開示

狭山事件: 証拠開示14件

報道によると、再審請求の中で石川さんの弁護団が請求していた証拠開示に対して、12月14日に検察が14件の証拠を開示したとのことです。

14件の証拠の中身が報道では今一つわかりにくい状況です。上でリンクした埼玉新聞や朝日新聞の報道を総合すると、

  • 開示された証拠
    • 万年筆などに関わる証拠
    • 「犯行現場」の特定に関わる捜査書類
    • 万年筆やカバン、腕時計に関する捜査報告書や、供述調書
  • 「不見当」とされた証拠
    • スコップの指紋検査報告書
    • 「犯行現場」を特定するための捜査書類
    • 万年筆の置き場所の図面

という感じで、結局「犯行現場を特定するための捜査書類」は開示されたのか開示されなかったのか、どっちなんだよと言いたくなります。

「真犯人推理」という観点からは正直なところそれほど重要なものはなさそうです。ただ、弁護団も戦略があるのでなんでもかんでも情報開示するわけにもいかないという事情もあるでしょうし、今後の続報を待ちたいと思います。
石川さんの冤罪を証明する上では強力な証拠になりそうなものは多いので、そちらの面での進展は期待できるのではないかと思います。


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狭山事件: 署名のお願い

sayama_hagaki再審要望署名ハガキ

前回のエントリで書き忘れました。

狭山事件にご興味がある方は、是非とも再審ならびに事実調べ要望の署名をお願いします。
下記は、支援団体が印刷しているはがきの文面です。必ずしもこの通りの文章でなくてもよいようですが、「狭山事件の事実調べをしてください」という内容と、ご自分(差出人)の住所・氏名は必ず記載していただくようお願いします。

宛先:
〒100-8933
東京都千代田区霞が関1-1-4
東京高等裁判所第4刑事部
裁判長 岡田雄一 様

本文:
狭山事件の公正・公平な裁判を求めます

狭山事件の第3次再審請求において、弁護団は、専門家による筆跡鑑定書、法医学鑑定書など、無実を証明する多数の証拠を裁判所に提出していますが、2審の確定判決以来34年以上、事実調べ証人尋問などが一度もおこなわれていません。このことは法の正義に反し、公正・公平ではありません。
弁護団提出の証拠について事実調べをおこない再審を開始されるように求めます。
また、昨年の開示勧告に引き続き、弁護団が求める証拠開示についても勧告されるよう求めます。

真犯人推理の観点からも、よりいっそうの証拠開示が求められるところです。再審・事実調べが開始されれば、また新たな事実が判明する可能性もあります。是非ともよろしくお願いします。

 

狭山事件: 現地見分2010

IMG_2159狭山市駅(西口)、すっかり様変わり

昨日実施された、「狭山事件を推理する」管理人氏主催の現地見分に参加してきました。案内役に伊吹隼人氏を迎え、初参加の方も多くかなりの盛況(ダジャレではない)でした。

石川一雄さんもお元気そうでした。しかし、「10歳も年下の○○ももう死んでしまったし、今は元気だけどいつどうなるかわからん」とおっしゃっていたのが印象的でした。

石川さんのお話で一つ新発見だったのは、I養豚場の兄弟が男兄弟だけで4人いて、姉妹まで入れると10人きょうだいだったというお話です。狭山事件関係本やマスコミでは「養豚場」と言えば「三兄弟」の枕詞として使われているのに、実際には4人いたというあたり、やはり従来の狭山事件関係本の取材不足を感じさせます。石川さんによると、三男は養豚場経営に参加していなかったのであまり表に出てきていないのではないか、とのこと。

席上、2010年5月13日に開示された証拠の一覧表をいただいてきました。新聞報道等では断片的なので、一応一覧表として掲載しておきます。

弁護団が2008年5月23日付け、2009年8月17日付けの証拠開示勧告申立書で開示を求めた証拠のうち8項目の証拠が2009年12月16日に(引用注、裁判所から)開示勧告された。そのうち、5項目について36点の証拠が2010年5月13日開示された。

番号 開示勧告が出された証拠
(2009年12月16日)
検察官の回答・開示された証拠
(2010年5月13日)
備考
1 殺害現場とされる雑木林内における血痕検査の実施およびその結果に関する捜査報告書一切(検察官は殺害現場のルミノール反応検査報告書について存在しないと言っているが、存在しないならその理由の説明を求める) 不見当 「殺害現場」の血痕検査については検査を行ったという埼玉県警係員の証言があり、見当たらないならその理由(廃棄したならいつ誰がどのような理由で廃棄したのか)を明らかにするべきでしょう。また、当初検察の回答が「存在しない」だったにもかかわらず「不見当」に変わっているということは、後で見つかったときに「その時には見つかりませんでしたが、あったんですね~」と言い訳できるようにするためとも考えられます。
2 捜査官が、殺害現場に隣接する畑で農作業をしていたOさんから3回目に事情聴取した際の捜査報告書ならびに供述調書 Oさん関係の捜査報告書1通を開示 そもそもこれまで非開示だったことがおかしな話ですが、今回開示されたことは一定の評価がされるべきでしょう。
3 殺害現場とされる雑木林の隣で事件当日、農作業をおこなっていたOさんを取り調べた捜査官の供述調書案、取り調べメモ(手控え)、調書案、備忘録等 Oさん関係の捜査報告書2通開示(ただし1通は上記と重複)
4 1963年7月4日付けの実況見分調書に記載されている現場(雑木林)を撮影した8ミリフィルム 不見当 これらの公式の文書にその存在が記載された証拠が見当たらないなら、その理由(廃棄したならいつ誰がどのような理由で廃棄したのか)を明らかにするべき。
5 死体鑑定書や1963年5月4日付けの(死体発見時の)実況見分調書に添付された写真以外の被害者の死体に関する写真 不見当
6 石川一雄さんが○○製菓の工場に勤務していた当時の借用書など筆跡鑑定等のために収集した石川さんの筆跡が存在する書類 6点の筆跡関係資料を開示 真犯人推理の観点からすると、石川さんの筆跡関係資料だけでなく警察が集めたすべての筆跡関係資料を開示してほしいものですが…
7 石川さんが逮捕・勾留中に書いた本件脅迫状と同内容の文書など、石川さんの筆跡が存在する文書
8 石川さんの取り調べにかかる捜査官の取り調べメモ(手控え)、取り調べ小票、調書案、備忘録等 捜査報告書等19通を開示
取り調べ録音テープ9本を開示
今回公開されたテープは自白時のテープです。石川さんも述べているように、その前、1ヶ月にわたって否認をしていた間のテープも公開されるべきと思います。

なお、本日、このエントリの前に業務連絡としてもう一つエントリを書きました。昨日の参加者の方々はそちらもご参照ください。

 

狭山事件: 新証拠開示

狭山事件で、弁護団の求めに応じて検察側から証拠開示がなされたとのことです。

要点だけまとめると以下のようになるかと思います。

【開示された証拠】

  • 取り調べの録音テープ
  • 筆跡鑑定に使われた、石川さんが書いた領収証
  • 「現場」近くの男性の調書

【開示されなかった証拠】

  • 「犯行現場」の血液反応検査報告書
  • 「現場」を撮影した8mmテープ

開示された証拠を見る限り真犯人推理に役立つなものはなさそうです。また、「殺害現場」のルミノール反応検査結果については「不見当」とのことですが、「ルミノール検査をした」と警察技師が弁護団に証言していますので、これまた誰がいつどのような理由で証拠を廃棄したのか、厳しく追及されるべきではないかと思います。「犯行時間帯に現場の近くにいた男性の調書」も公開されたとのことで、これが「犯行時間」に「現場」から30mほどの畑で農作業をしていたOさんの証言であれば、冤罪の証明の方向性としてはかなり大きそうです。

 

狭山事件: 東京高裁が東京高検に証拠開示勧告

とりあえず速報です。

本日(12月16日)の三者協議で、とうとう東京高裁が東京高検に対して証拠開示勧告を行ったとのことです。あくまで法的な拘束力はないとのことですが、是非とも迅速な開示ならびに再審開始をお願いしたいところです。

狭山事件: 緊急市民集会(速報)

sayamashuukai狭山事件の再審を求める市民集会

11月27日(金)、「狭山事件の再審を求める市民集会 ~ 検察官の証拠隠しは許されない!東京高裁は開示勧告を!証拠開示と事実調べを求める緊急集会」が日比谷野外音楽堂で開催されました。

仕事の合間だったので全ての内容を聞くことはできませんでしたが、狭山事件弁護団主任弁護人である中山武敏弁護士の報告などがありましたので、取り急ぎ速報として上げておきます。

中山弁護士の報告内容は、概略下記の通りです。

  1. 10月30日に東京高検から、証拠の開示について不同意という意見書が提出された。
  2. 次回の三者協議(裁判所・検察・弁護団)は12月に予定されているので、引き続き検察に証拠開示を求めるとともに、裁判所からも証拠開示勧告を引き出すよう努力していきたい。
  3. 証拠の存在・不存在についてすら回答できないという内容だった。
  4. 唯一、「殺害現場」(検察・刑札が殺害現場とした雑木林)のルミノール検査報告書については「不存在」と回答してきた。しかし、「現場」のルミノール反応検査を行い、報告書を作成したという埼玉県警鑑識課員(当時)の証言もあり、「不存在」だけでは納得できない。現在存在していないのであれば報告書はどこへ行ってしまったのか。破棄したのであれば、いつ、誰の責任において破棄したのかを明らかにしていきたい。
  5. 裁判所は今回協力的であるので、今後協力して証拠開示・再審への道を開いていきたい。

席上でも話がありましたが、検察が税金を使って捜査権を持って捜査を行うのは、容疑者を有罪にすることが目的ではなく、あくまでも真実に近づき、社会正義を実現することが目的であるはずです。弁護士からの請求に対して、証拠があたかも検察の所有物であるかのように、開示するかどうかを検察が判断すること自体がおかしな話だと思います。もし開示した結果を弁護士が悪用するようなら、それを罰する法律を作れば済む話でしょう。

また、民主党・松野信夫議員の話の中で、いわゆる取り調べ「可視化」法案には、「可視化」だけではなく検察による証拠開示の義務づけも含まれていることを知りました。個人的に「可視化」の効果にはかなり懐疑的なのですが、証拠開示義務づけの法制化に関しては是非とも実現してほしいと考えます。

11月30日追記: 当日、参加者の方々の高齢化が進んでいるように見受けられたのがちょっと気になりました。私も、世間一般的には、もう若くないさと君に言い訳するような年齢(というネタで年齢がバレそうですね)ですが、見回したところ参加者の中では一番若い部類に属するようでした。
石川さんもお元気ですがもう70歳を超えていらっしゃいます。裁判所と検察には、メンツを超えて早期に正常な対応を行うことを望みます。