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狭山事件: 現地調査 2013

伊吹隼人さん主催の現地調査会が下記の通りで開催されます。

  • 開催日:2013年5月5日(日・祝)
  • 集合場所:西武新宿線狭山市駅改札口
  • 集合時間:14時10分 出発時間:14時15分
  • 歩行距離:約3~4km 所要時間:約3時間
  • 最少催行人員:3名(先着15名まで) 参加費:100円(資料代等実費)
  • 雨天の場合(午後雨天の予報含む):中止(※微妙な場合は本ブログで当日朝10時までに告知致します)
  • コース:狭山市駅~被害者通学路~旧入間川駅跡~荷小屋跡~西武通運跡~死体第一発見者宅~入間川分校跡~狭山郵便局跡~小沢毛糸店跡~東中学校跡~第一ガード~第二ガード~X字路~荒神様~OG新居跡~Wさん宅~殺害現場跡(確定判決による)~芋穴跡~死体発見現場~荒縄盗難地点~スコップ発見現場~IT宅跡、石川さん宅跡付近(※現地事務所には立ち寄りません)~白山神社~狭山市駅
  • 上記の通り3~4km程度を徒歩で行動しますので、歩きやすい服装ならびに靴でご参加ください
  • 終了後には駅前飲食店にて「意見交換会」を行います(希望者のみ)

資料の準備等の都合上、参加をご希望の方は前日までにblog@flowmanagement.jp(間の@を半角に変換してください)宛にメールでご連絡ください。ご本名、住所等は明記しなくても結構です。当日の天候等の関係で実施が危うい場合にはいただいたメールアドレスにご連絡しますので、blog@flowmanagement.jpからメールを受信できるよう(スパムではじかれないよう)設定して下さい。

今年は事件が起きてからちょうど50年にあたります。事件に少しでも興味がある方のご参加をお待ちしております。


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津山事件: 本田透著『電波男』

久しぶりに津山事件関連の話題です。

掲題の本で津山事件の犯人である都井睦雄が採り上げられているのを知りました。

この本の中で、著者(本田透氏)は都井睦雄と宮沢賢治のことを

ほぼ同時代に地方の農村に生きながら、方やいまだにファンの多い「童話作家」、こなたいまだに猟奇小説や猟奇映画に登場する「連続殺人鬼畜」。まったくもって人生のエンディングが異なっている二人なのだが、共通点は非常に多い。

と対比しています。しかし、実際には宮沢賢治は1896年(明治29年)生まれ、1933年(昭和8年)死去で、都井睦雄は1917年(大正6年)生まれ、1938年(昭和13年)死去ですから、二人には21歳の差があり、死去した年は確かに近いものの、「ほぼ同時代」というのは正直ちょっと無理があるかと思います。

そして、本田氏が二人の共通点として挙げているのは下記の点です。

  1. 田舎の農村出身の長男で割と裕福
  2. 病弱
  3. 引きこもり
  4. 片や妹萌え、こなた姉萌え
  5. 作家志望だが、田舎暮らしが祟ってまったく芽が出ず
  6. 片や生涯真性童貞、こなた金を払うか追い込みをかけなければ相手にされないモテない男。いずれも生涯恋愛経験ゼロ

1~4まではある程度頷けるところですが、5と6に関しては多少の異議があります。5に関して、これまで本ブログや同人誌でも論証してきましたが、睦雄が作家志望で少年向け小説を書いていたという話や、睦雄が書いたとされる小説「雄図海王丸」は筑波昭氏による創作と考えます。したがって、実際に童話や詩を書き、発表していた宮沢賢治との共通点とするのは無理筋ではないでしょうか。また、「生涯恋愛経験ゼロ」という点に関しても、宮沢賢治に交際相手の女性がいたという説は複数の研究者が唱えていますし、都井睦雄も結核に罹患していることが判明するまでは村の女達の間でそれなりにモテてていたという話もあります。

そして、大きな相違点として以下の2つが挙げられるでしょう。

  1. 宮沢賢治が、病気によるブランクはあったものの旧制盛岡中学→盛岡高等農林学校へ進学したのに対し、都井睦雄は「祖母」の反対や病気もあって高等小学校で学業を終えたこと
  2. 宮沢賢治には父母が健在であったのに対し、都井睦雄には「祖母」と姉しかおらず、姉が嫁いだ後に「祖母」が実は血縁がないことが判明したため、天涯孤独の身であったこと

これらはいずれも、睦雄が犯行を決意する上で重要なファクターであり、その意味で宮沢賢治と都井睦雄の「人生のエンディング」が異なってしまったのは当然の帰結ではないかと思います。

ただし、本田氏の

賢治は、妄想する=二次元の世界を作る、というオタク行動によて、鬼畜化という悲劇を阻んだのだ。

むしろ、モテない男は、心の安寧を得るためにどんどんオタク化するべきなのだ。都井だって元々は姉に萌え狂っていたのだからもっともっと萌え燃料を与えられていれば、こんなことはしでかさなかっただろう。

という議論には一理あると思います。本田氏の言うとおり、睦雄が現代に生きていれば、オタク的二次元に心の安寧を求めることである程度悲劇を回避できたのではないでしょうか。逆に、現在進められている二次元表現に対する規制が進みすぎれば、都井睦雄的な悲劇を生み出す結果になるのではないかと危惧します。

最近Twitterで見た表現に下記のようなものがありました。

「暴力ゲームなんてやってるから本当に暴力犯罪に走る」 と「恋愛ゲームなんてやってるから本当の恋愛が出来なくなる」の矛盾は確かに噴く。

全くその通りだと思います。こうやって無茶苦茶な論理を振り回してゲームや小説、マンガを悪者にする人の頭こそが「ゲーム脳」なのでしょう。都井睦雄の犯行時の装束が「少年倶楽部」のマンガにヒントを得たものではないかという話がありますが、そういうゲーム脳患者の方々が当時いたら、「少年倶楽部を発売禁止にしろ」という話も出たでしょうか。


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狭山事件: PTA会長の証言 その2

東京新聞昭和38年5月4日付朝刊東京新聞昭和38年5月4日付朝刊

サンケイ新聞昭和38年5月4日付朝刊サンケイ新聞昭和38年5月4日付朝刊

前回掲載した週刊文春の記事に関して、「PTA会長がそんなに功名心にはやった目立ちたがりであれば、この証言もでっちあげあるいは誇張が入っているるのではないか?」という疑問(疑惑)をお持ちになる方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、実際にPTA会長がさのヤの張り込みに参加したことは裁判でも本人が証言し、警察等からも否定の言葉は出ていないため事実として間違いないと思われ、さらに言えばA先生が参加していたというのも事実の可能性が高いと思います。

その理由はいくつかあります。

  1. 前回のコメントで伊吹隼人さんに補足していただいているように、PTA会長が5月2日朝の時点で警察から捜査協力を受け、その足でH中学へ行って先生方に「卒業生の筆跡を見せてほしい」などと話をしていたことは多数の証言があり間違いないこと
  2. さのヤ張り込みの翌日、5月3日にA先生とMHくん(PTA会長の息子)が被害者宅にいる写真が残っていること

上の2番目の点で言及した写真を上に再録しました。サンケイ新聞の記事に出ていた写真のキャプションを信用すると、左から以下のように並んでいることになります。

  • A先生(被害者の中学時代の担任、第二ガードで被害者を目撃した人)
  • Mくん(被害者の中学時代の同級生、PTA会長の息子)
  • 長兄
  • 不明。父親か?サンケイ・東京新聞ともキャプションなし
  • 次姉
  • 不明。次兄か?サンケイ・東京新聞ともキャプションなし

この写真を見て、「家族でもない、単にもう卒業してしまった中学の時の担任や同級生が、なんで被害者宅で写真に収まっているのか?」という違和感を感じる方は多いと思います。私もそう感じました。その理由は前日の張り込みからの流れで、MHくんはPTA会長の名代で来ていたと推定するのが一番しっくりくるところでしょう。


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狭山事件: 『狭山事件 50年目の心理分析』 その4

前回から間が空きましたが、殿岡駿星さんの新しい本『狭山事件 50年目の心理分析』についての分析の続きです。

この本で気になるのは、地理的な位置関係に首をかしげさせられる記述が多いところです。そして、掲載されている地図(殿岡さんの手描きのようです)も、実際の地図と照らし合わせると位置関係が合っていないところが見られます。単純に位置関係が合わない程度であれば問題はありませんが、それが「推理」にもかなり重大な影響を与えているところが問題です。

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その他: あけおめ2013

あけましておめでとうございます。

昨年後半は身辺多忙もあり本ブログの更新が滞りがちになってしまいましたが、今年は順次更新していきたいと思います。よろしくお願いします。


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津山事件: サンディフック小学校銃乱射事件

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銃乱射事件の追悼のため、半旗を掲げるホワイトハウス

アメリカで、27人(犯人の母親、児童20人、教員6人)を殺害、2人に傷害を負わせた上で自分も自殺した銃乱射事件がありました。被害者の方々の安らかなお眠りをお祈りします。

今回の事件を受けて銃の所持を制限する法律ができるのではないかという観測もありますが、個人的にそうはならなそうな気がします。なぜなら、アメリカ合衆国憲法修正第2条には「国民が銃を持つ権利は侵してはならない」と明記されているからです。この修正第2条を守り通そうとするNRA(National Rifle Association、全米ライフル協会)の暗躍もあり、一時的に「銃を規制するべきだ」という話が出たとしても、なぜか最終的には「護身のため、より銃を持ちやすくするべきだ」という法律ができるのではないかと思います。以前に「ルビー・カフェテリア事件」が起きたときがそうだったので。

NRAは案の定、「学校が丸腰だったのがいけない。全米のすべての学校に銃で武装した警備員を設置するべきだ」というコメントを出しています。「5年前、バージニア工科大学の銃乱射事件が起きたときに、すべての学校に銃で武装した警備員を置くべきだと提言した。そうしたらマスコミは私をクレイジーと呼んだ」そりゃそうでしょう。その考えがクレイジーでなかったら、何がクレイジーなのか。結局のところ、銃器業界の利益と自分の既得権を守りたいということでしょう。

この事件に関しては、犯人が兄の身分証明書を持っていたため、兄の名前が当初犯人として報道され、Facebookなどが炎上したという話もありました。昨今のこういう事件の報道の難しさも改めて感じさせられます。

とりあえず、「世界大量殺人ランキング」ページも更新しておきました。


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冤罪事件一般: PC遠隔操作冤罪事件

ここのところ話題になっているPC遠隔操作冤罪事件について。この事件には、日本における冤罪事件の問題点が凝縮されているように思います。

まず最初に事件の概要です。2ちゃんねるなどの掲示板に学校や皇族を襲撃すると書き込んだ容疑で、日本各地で4人が逮捕されました。そのうち、神奈川県の大学生(未成年)は容疑を「自白」し、家庭裁判所で保護観察処分が確定していました。しかし、「真犯人」から、逮捕された人たちのPCを遠隔操作して襲撃する書き込みを行った旨のメールがTBSや弁護士の落合洋司さんに届き、それによって4人の冤罪が明らかになった、というものです。

この中で最大の問題は、神奈川県の大学生が犯行を「自白」していたことです。以下、報道から引用します。

朝日新聞

  • 犯人と捜査当局しか知り得ない内容が含まれた上申書を大学生が出していた
  • 神奈川県警の捜査員が、容疑を否認していた東京の大学生(19)に対し、「名前が公に出る心配はない」「早く認めたほうが有利だ」といった趣旨の発言で、自供を促していた

読売新聞

  • 手口や動機を不自然なほど詳述した上申書が県警に提出されていた
  • 少年は10分間ほど、何も言わずに泣き続け、上申書を書き始めた
  • 横浜地検が、容疑を認めた内容が上申書とほぼ一致する自白調書を作成していた

これほど鮮やかに、「自白における秘密の暴露」やら「泣きながら書いた上申書」がアテにならないことを示す例もないでしょう。
狭山事件のような冤罪事件で、「犯人しか知らないことも自白してるんだし、裁判所が認定してるんだし、本当はやったんだろ?」という無邪気な意見を時折見かけます。しかし、これが「秘密の暴露」の実態なのです。この事件で、大学生が「秘密の暴露」をできる可能性はまったくありません。警察官や検察官が、捜査で判明したことを作文し、その作文を押しつけて「私がこの通り話しました」と被疑者に拇印を押させたことは明らかです。そういう、作文に捺印させるテクニックに長けた検察官や刑事が「デキる」と評価されるこの国では、「秘密の暴露」があったからといって有罪の証拠にはなり得ないことが白日の下にさらされたと思います。

自白調書の「具体性」「迫真性」「秘密の暴露」がアテにならないならどうすればいいのか?という人もいるかもしれません。しかし、そもそも自白はアテにならないものだというのが前提であるべきです。
自白がなくても有罪を証明できる物証があることが有罪の前提となります。しかし、この事件ではその物証の扱いでも問題があったと報道されています。

読売新聞

  • 神奈川県警が少年(19)(保護観察処分)を逮捕した直後、パソコンの通信履歴に第三者の不正操作をうかがわせる不自然な記録があることに気づきながら、裏付け捜査を怠っていたことがわかった。
  • 保土ヶ谷署生活安全課と捜査協力をした県警サイバー犯罪対策センターでは、少年を7月1日に逮捕した直後から、こうした不自然な通信履歴に気づき、同センターが詳しく解析。同9日までに、「わずか2秒間で書き込むことは人の手では不可能」として、第三者が関与した可能性について把握し、その見解を同課にも伝えた。

結局のところ、この日本国においては、逮捕されたらその時点で終わりなのです。警察官や検察官は逮捕した被疑者が無罪になれば出世に響くので、なんとしても自白を取って、不利な証拠は極力隠蔽して、有罪に持ち込もうとします。そして、裁判所は検察官の書いた調書を追認するだけの下請け業者なので、無罪判決が出ることは99%ありません。

そこを正すにはまず、すべての取り調べの可視化と、すべての捜査資料の無条件での全面開示、ならびに隠蔽した場合の警察・検察官に対する罰則が必要でしょう。しかしそれよりも、「一時的にでも自分がやったって言ったんだから、本当はやったんだろ?」という、ある意味で無邪気な、ある意味で残酷な「世間の目」を正していく必要があるのではないでしょうか。「世間の目」がそのようなものである限り、警察・検察による隠蔽・捏造工作はなくならないと思います。その意味で、今回の事件によって「警察や検察が自白や上申書を捏造することがある」「警察や検察が被疑者に有利な証拠を握りつぶし、そのために有罪判決(今回の場合は保護処分でしたが)が出ることがある」という「事実」が、「常識」になってほしいと切に願います。

以下蛇足。

神奈川県の大学生は、他の報道で「元大学生」とされていることから、保護観察処分になったために大学をやめざるを得なくなったようです。冤罪の問題点はここにもあります。痴漢冤罪でもそうですが、いったん逮捕されてしまえば、社会的にその人は抹殺されたも同然の状態になります。そして、今回のように話題になって無実が明らかになった事件であっても、「疑われたんだから何か疑わしいことをしたんだろ?」「いったん認めたくらいだから、なんか後ろめたいことがあったんだろ?」という「世間の目」はずっとつきまといます。

私が以前書いた児童ポルノ法の問題点について、「妄想だ」と笑う人もいるでしょう。しかし、繰り返しになりますがこれがこの国の司法の現実なのです。


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狭山事件: 『レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史』

掲題の本を読みました。

本全体としては西武線(新宿線と池袋線)沿線の団地での共産党や創価学会の興亡の歴史と、その原因分析が主なのですが、第11章が狭山事件の分析に充てられています。その分析内容がなかなか斬新です。

具体的には、当時の西武線の正確なダイヤを西武鉄道に問い合わせ、それと石川一雄さんが主張する当日の足取りを突き合わせることで、石川さんの主張に少なくとも鉄道ダイヤの面から見て矛盾がないことを証明しています。特に、「(荷小屋から出て)入間川の駅に時計を見に行ったわけだね、そうしたら電車が出てすぐだったので、5時3分前頃だったですね」という石川さんの証言の信憑性が高いことが論証されています。

基本的には石川さん冤罪の観点からの議論が中心ですが、真犯人推理の面からもいろいろ参考になる記述があります。例えば以下のものです。

この時間帯は、本川越ゆきの電車は一時間に二本しかなく、13時40分発(引用注、所沢発)の次は14時10分発までなかった。

当時、西武新宿線は所沢-本川越間が単線であったから、入間川駅でも必ず下り電車と上り電車の交換が行われていた。16時51分、まず下りの急行本川越ゆきが入間川に到着した。続いて52分には、上りの急行西武新宿ゆきが到着した。そして下り電車は54分に、上り電車は55分にそれぞれ発車した。

これらは、以前に本ブログでもご紹介したNTさん証言と、それに関する考察を裏付けるものです。

ここから直接・間接に推定できることは下記の通りです。

  1. 当時、昼間の時間帯には1時間に2本しか電車がなかった
  2. 当時、入間川駅(現在の狭山市駅)では単線交換が行われていた
  3. 下りの発時刻は毎時24分と54分、上りの発時刻は毎時25分と55分
  4. したがって、NTさんが乗ろうとしたのは下り電車

この他にも、当時の入間川駅構内の様子(西口しかなかったこと、下りホームから上りホームへ通じる地下階段もまだなく、構内踏切を渡って反対側ホームへ行っていたこと)や、当時まだ西武線で貨物輸送が行われていて、旅客電車の他に貨物列車も発着していたことなど、当時の入間川駅周辺の雰囲気がよくわかる記述があります。

狭山事件に関する記述は24ページだけですが、事件に興味がある方には一読の価値があると思います。