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下山事件: 佐藤一さんの新刊が無事出版

以前のエントリでもとりあげた、故・佐藤一さんの新刊が無事出版されたようです。

私(本ブログ管理人)もようやく手に入れたばかりでまだ読了していません。途中まで読んだ感じでは、例によって「事実」の積み重ねで平成三部作のウソを指摘する、その容赦なさがある意味痛快でもあります。

地味な自殺説よりも陰謀論の平成三部作の方が読んでおもしろいし、本も売れるし、「商売」としてはその方が絶対的に正しいのでしょう。しかし、「事実」がどちらにあるかというのは一目瞭然と思います。

下山事件: pH変化による死亡時刻推定の追試 その1 準備編

IMG_1715今回準備した実験器具類

前回のエントリなどで書いたように、昭和24年の下山事件当時に秋谷教授が採用していた試験紙法では測定精度に限界がありました。つまり、たとえpH変化による死亡時刻推定が理論的には正しい物であったとしても、技術的限界から実用になるものではありませんでした。

それに対して、現代の高精度なpHメーターを使用した場合に、本当に秋谷理論が正しいのかどうかを検証してみようというのがこれからご説明する実験の趣旨です。

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下山事件: 試験紙によるpH測定

下山事件において、東大裁判科学教室の秋谷教授が持ち出した「pHによる死後経過時間の推定」については、これまでも何度か批判的な記事を書いてきました。これから数回にわたって、この件についてより詳細なご報告&ご説明をしたいと思います。

まず、ジャブ程度に、以前に書いたエントリでご説明した、「試験紙法で0.2pH単位の精度を確実に出すのは実際には不可能」という内容をより具体的にご説明します。

この実験動画をご覧下さい。

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下山事件: 秋谷教授のpHによる死後経過時間判定

下山事件自殺説紹介ブログさんの方で、特別講演 PH・時間曲線による死後経過時間の判定というエントリが発表されました。

このエントリは、下山事件研究の上で非常に重大な意義を持っています。
秋谷教授のpH曲線による死亡時刻推定法に関しては、これまで通俗的に取り上げられることは多くても学問的な基礎は謎な部分が多く、活字になっているものは古畑教授の著書に掲載されたものくらいしかありませんでした。その中で、これまで伝説のように

第三十四次日本法医学会総会での秋谷氏によるpH時間測定法についての特別講演録(「PH・時間曲線による死後経過時間の推定」、日本法医学雑誌 第4巻3-4号、p185-190、昭和25年)

で秋谷教授がpH法について正式に学会発表している、ということだけが語られてきました。

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下山事件: 死後の筋肉のpH変化について

「死後」「pH変化」でググると、一番上にこんな論文(以下「東北農業研究論文」)が見つかります。

これは、屠殺時に延髄・脊髄を破壊した牛とそうでない牛の筋肉の死後のpH変化を測定した論文です。

このpH曲線が秋谷教授の「標準曲線」と大幅に異なる大きな理由は、以下の2点にあると思われます。

  1. 東北農業研究論文は屠殺後の牛を4℃で保存した結果だが、秋谷教授の実験では25℃ないし30℃で保存していた
  2. 東北農業研究論文においては肉に直接肉のpH測定用プローブを刺してpH測定を行ったのに対し、秋谷教授の実験では肉をすりつぶして水に溶かし、その水のpHを測定した

したがって、曲線の形状が異なること自体を問題にするつもりはありません。

しかし、東北農業研究論文で注目すべきと思われるのは、筋肉の部位、ならびに、延髄・脊髄を破壊したかしなかったか(筋肉に死亡前にストレスを与えたか与えていないか)で、pH変化が大きく異なるという点です。特に、脊髄に近い大腰筋では延髄・脊髄破壊の有無で大きな差が現れています。

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下山事件: pH計について その4

『法医学の話』岩波文庫、古畑種基著『法医学の話』岩波新書、古畑種基著

pH測定の精度をこれまで問題にしてきましたが、では、pH測定で精度が出ないとどのような問題があるのでしょうか。

秋谷教授のpH測定による死亡時刻推定については、すでに下山事件自殺説紹介ブログさんの方で詳細な紹介があります。要するに、秋谷教授の下で実際に実験を担当していた塚元助教授(当時)ですら「あの方法はダメですよ。問題にならないですね」と断言するシロモノだったということです。

にもかかわらず、秋谷教授自身ならびに古畑教授は「20分以内の精度で死亡時刻推定が可能」と断言しています。本当にそうなのでしょうか。手法そのものに対する疑問(他の研究者からの批判)については下山事件自殺説紹介ブログさんの記述をご参照いただくとして、ここでは技術的な問題点を論じたいと思います。

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下山事件: pH計について その3

毎日新聞 昭和25年4月23日付毎日新聞 昭和25年4月23日付

前回書いたY会長のお話と周辺の情報を総合すると、下記のようになります。

  • 「秋谷教室にpH計が入ったのは昭和25年(下山事件の翌年)1月」という毎日新聞の報道とY会長のお話は合致している。(毎日の報道は本日の画像を参照。「今年一月に入って(中略)ガラス電極によるPH測定機をとり入れ同教室の設備を完成」云々という記述がある)
  • 下山事件直後は、『下山事件全研究』での塚元助教授(当時)の証言どおり、試験紙を使っていたと考えられる。
  • 当時、試験紙で0.1単位のpH測定精度を出すことは不可能。
  • 事件の1年後でもまだ秋谷教室ではモルモットの死後のpH変化の測定追試を行っている状態であった。従って、1年前の昭和24年当時に、完全に確立された理論・技術ではなかったと思われる。

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下山事件: pH計について その2

以前ちらっと書いた下山事件とpH計に関するお話を、当時実際に秋谷教室に出入りしていた方から直接聞くことができましたので、記録として残しておきます。

こういう「直接の経験者からの聞き取り」というと、「私の大叔母が……」という話といっしょで、本当かどうか確認しようがないという批判が出るかもしれません。しかし、この方は上場企業の現役会長であり、EDINETあたりで調べていただければ少なくとも人物の実在についてはご確認いただけるのではないかと思います。

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