Category Archives: 狭山事件

狭山事件: 『狭山事件 -46年目の現場と証言』発刊

『狭山事件 -46年目の現場と証言』『狭山事件 -46年目の現場と証言』伊吹隼人著 風早書林

無事手元に届き、一通り読了しました。感想としては、現時点で最もお勧めできる狭山事件入門書、と言えると思います。

目を見張るような斬新な推理や驚くような新発見があるわけではありません。一つ一つの事実を丹念に追いかけ、対立する事実がある場合にはそれも示しながら現時点で最も妥当と思われる内容を叙述している、そういう本です。

著者ご本人による「お詫び」が発表されており、確かに表紙に関してはどうも狭山の農家のイメージではありません。しかし、内容に関して、少なくともさらっと読んだ感じでは大きく気になるような校正ミスや仮名のミスは感じませんでした。

驚くような新発見はないと書きましたが、それでも今回初めて明らかになったことはいくつかあります。例えば、被害者宅の長姉は事件の前年に家を出たというのが通説でしたが、長姉が働いていたクリーニング店店主へのインタビューにより、実際にはもっと前、長姉が18歳か19歳の時(次姉が中学校を卒業してすぐ)に家を出ていたことが判明しています。長姉の家出・四女の殺害(狭山事件)・次姉の自殺が相次いだことを根拠に、被害者宅に関して何か問題があり、そのためにこれらの事項が連続して起きたのではないかという議論がなされることがありますが、長姉が家を出たのは実際には事件の8~9年前ということになると、それは狭山事件とは無関係ということで決着がつくのではないかと思います。

下田本は、従来の本、特に、亀井本に書かれているかなり眉唾物の内容についてもほぼ「事実」として記述してしまっていました。今回の伊吹本では、従来「通説」とされてきたこともいちいち検証し、疑問がある内容については修正あるいは批判的に記述されていますので、これから狭山事件に興味を持って調べようという方には最適と思います。

ただ、後半部分は初心者にはかなり歯ごたえがあるというか、前提になる議論を知らないとわかりにくい部分もあるかと思います。わからないことがあれば、ご質問をいただければ私(管理人)がわかる範囲はお答えしようと思います。また、著者の伊吹氏自身もこのブログは見ていただいているようなので、必要に応じて伊吹氏自身にも確認させていただきたいと考えています。

この本に関する問題は、値段(笑)と、出版社が小さいのでかなり大きな書店でないと置いていないという点でしょうか。現時点ではまだアマゾンにも出ていませんが、お近くの書店で取り寄せるか、版元に直接発注するか、ジュンク堂通販で購入できます。

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狭山事件: 中田直人弁護士逝去

石川さんの裁判で主任弁護士を務めた中田直人弁護士が、2月3日にお亡くなりになっていたことをついさっき知りました。

ニュースでは、[[松川事件]](『下山事件全研究』で有名な佐藤一さんが疑われ、結局無罪になった事件)や[[布川事件]]の弁護を担当したことには言及されていても、なぜか狭山事件の主任弁護士をされていたことはほぼ全部のマスコミがスルーでした。

こちらのブログに、中田弁護士の狭山事件裁判における主任弁護士としての歴史がまとめられています。その後、共産党推薦(無所属)で茨城県知事選挙に出馬されたりしていたようです。

最終的に、二審判決(寺尾判決)後、裁判とは関係ない党利党略の話から同僚の7人の弁護士と共に狭山事件裁判から手を引かざるを得ない状況になったとはいえ、渋る検察・裁判所からいくつかの証拠を開示させたことなど、その貢献を疑う人はいないでしょう。

これでまた当時を直接ご存じの方が他界されてしまったわけで、ご存命の関係者がいらっしゃる今が、狭山事件の真実を解き明かす最後のチャンスなのかもしれません。

謹んでお悔やみを申し上げます。

狭山事件: 『46年目の現場と証言』 その5

発売告知が出ました。嫁を質に入れてでも購入してください。

伊吹隼人著「狭山事件ー四十六年目の現場と証言」
定価1,800円(内税)
2月25日発売
出版社は風早書林
2月18日より直販予約受付開始となります。
「購入部数・お名前・連絡先電話番号・住所」を記入の上、
FAX 048-464-8505
Eメール kazahayashorincc@yahoo.co.jp
で申し込んで頂ければ、送料・郵便振替手数料(会社側負担用紙を同封)無料で直送されます。
書店の店頭に並ぶのは3月1日頃からになると思います。
アマゾン等で出る日は不明です(通常少し遅れる模様)。

その他: 山一證券破綻について その2

前回のエントリを書く際に検索していて、『滅びの遺伝子―山一證券興亡百年史 (文春文庫)』の文庫版が出版されているのに気がつきました。

この本の単行本も労作でしたが、文庫本はかなりの部分が追加の取材や資料に基づいて書き直されて、ほぼ書き下ろしと言ってもよい内容になっており、山一破綻に関する資料としては社内調査報告書と並んでもっとも包括的かつ信頼できる資料と思います。著者は冒頭で「以下は私の仮説である」と書き始めていますが、その仮説を構築するために積み重ねた資料と直接取材の量は、単なる仮説を超えて十分な説得力をこの本に与えることに成功していると思います。

文庫本版で、バブル崩壊から山一破綻に関する叙述は398ページから428ページまでの30ページ程度、全体で400ページを超えるこの本の中で1割にも満たない量です。しかし、その叙述は、他のどんな本よりも雄弁に「山一が崩壊した理由」を描写しています。

いずれにしても、昨今の金融危機の中で、前回の金融危機で破綻した「山一證券」という存在に興味がある方には必読の本だと思います。Wikipediaの山一證券の項目も、この文庫本の出版によって全面改訂が必要になっていると思います。私(管理人)はもうWikipediaには書かないと決めたので書きませんけど(笑)。

狭山事件: 被害者とOGの時系列的動向

被害者とOGの当日の行動を時系列的にまとめてみました。事項の取捨選択は私(管理人)の主観によります。時刻については証言者本人が一番最初に言った時間を採用しています。時刻に関しては後で刑札が「つじつまが合わない」として変更させていることも多く、関係書籍ではその変更後の時刻が採用されていることも多いのですが、最初に言い出した時刻には証言者本人なりの根拠があると思われること、「原証言」としての価値があると思われることからその取り扱いとしています。もし異論があればコメントでご指摘ください。

第一ガード、第二ガード、S自転車店等の位置関係については、事件関係地図も参照してください。大きい地図の方でいうと、ほとんどの関係地点が一番左側の方(西武線の線路沿い)に集まっています。

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狭山事件: SG巡査部長の筆跡

SG巡査部長筆跡『真実は細部に』よりSG巡査部長筆跡
次に投下しようと思っていたネタが思ったよりもまとめるのに時間がかかりそうなので、つなぎのネタです。筆跡シリーズです。

SG巡査部長に関してはこちらの記事もどうぞ。彼の八面六臂の活躍は一介の交通課巡査部長としてはあまりにも不自然であり、何らかの形で事件そのものに関与していたのではないかという疑惑を私(管理人)は持っています。

この筆跡を見る限りでは脅迫状の筆跡とは違うようで、脅迫状は誰が書いたのかというのは未だに疑問が解けません。

狭山事件: 小ネタ集

新刊本『46年目の現場と証言』についてちょっと出版時期が遅れるとのことですので、当サイトでも告知させていただきます。

「狭山事件を推理する-近況告知板」にもあるように、年末に現地調査に参加させていただきました。

狭山市駅西口駅前狭山市駅西口駅前
狭山市駅の西口です。すっかり更地になってしまいました。被害者が針刺しを買ったというO糸店もすでに取り壊されてしまいました。

TN自宅TN自宅
TNの自宅です。「近況告知板」の写真の反対側(玄関側)です。ほぼ当時のままと思われます。

I-TR「自殺」現場の踏切I-TR「自殺」現場の踏切
養豚場経営者の弟、I-TRが「自殺」した現場の踏切です。これも「近況告知板」の写真の反対方向です。この写真で、踏切のすぐ向こうに駅(入曽駅)が見えています。I-TRは「川越行きの終電車」に轢かれたので、この入曽駅を出てすぐの電車に轢かれたことになります。発車してこの距離を走った程度の速度で轢かれた人間がそれだけで死ぬものなのか、入曽の駅に停車している電車からでもこの踏切は見えていたのではないか(当時のこの踏切は、木でできたもっと粗末なものであったとのことですが)、さらには(「近況告知板」で触れられている通り)「生体れき断(=自殺)だったのかどうか」など、現場を見るといろいろと疑問は尽きないところです。

狭山事件入門: 脅迫状の筆跡

あけおめことよろです。

脅迫状の筆跡に関して、石川さんの裁判において提出された警察側の鑑定書によると、脅迫状と石川さんの筆跡は一致したことになっています。また、最近2ちゃんねるなどで「脅迫状は石川さんの筆跡とそっくりだ」というような話が出ているようです。一応確認しておきたいと思います。

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