津山事件: 冬コミ告知 その6

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たびたびすいません。今回で本当に告知は最後です。
本が出来上がってきました。感慨深いものがあります。読み返すといろいろ修正したいところもありますが、それはまた次回以降の課題ということで。

以下、今回追加した論考の一部です。

第3章 都井睦雄
小学校入学以前
 都井睦雄の戸籍謄本を「津山事件報告書」から引用しておく。
 戸籍によると睦雄は大正6年(1917年)3月5日に加茂町倉見で生まれたとされている。という言い方をするのは、当時の戸籍の届け出はかなり適当だったようであるからだ。例えば睦雄の父母の死亡年月日も、後で詳しく論ずるが墓石の記載と戸籍の記載に食い違いがある。
 私が個人的に睦雄の出生日に多少の疑義を感じるのは、例の「小学校の入学を1年遅らせた」という話にある。「津山事件報告書」には、小学校の担任教師のコメント一覧が掲載されているが、尋常小学校一年生で睦雄を担任した藤田かや子教諭をはじめ、誰も1年遅れという点に触れていない。また、西加茂尋常高等小学校校長からの公式回答にも「就学が1年遅れた」という記載がない。もし筑波本にあるように祖母が無理に1年就学を遅らせたのであれば特筆されるのではないかと思う。

コミックマーケット79
場所: 東京ビッグサイト: ゆりかもめ「国際展示場正門前」駅またはりんかい線「国際展示場」駅下車
出展日: 12月31日(金)(3日目)10:00~16:00
東Q-50b「事件研究所」

販売物:

  • 『津山事件の真実(津山三十人殺し)』事件研究所編著
    A5版350ページ、販売価格3,900円
    付録: 津山事件報告書(昭和14年、司法省刑事局編著)
  • 『狭山事件-46年目の現場と証言』伊吹隼人著(風早書林)
    販売価格1,000円(委託販売)
  • 『決戦―豊島一族と太田道灌の闘い』葛城明彦著(増補改訂・自費出版版)
    販売価格1,000円(委託販売)

津山事件: 冬コミ告知 その5

ようやく脱稿しました。何とか間に合いそうです。最終的に全350ページになります。うち、付録である津山事件報告書の方が240ページ以上を占めています(笑)。

同じブースにて、下記の2点を受託販売します。

  • 伊吹隼人著: 狭山事件-46年目の現場と証言(風早書林)
  • 葛城明彦著: 決戦―豊島一族と太田道灌の闘い(自費出版版)

前者は言わずとしれた「伊吹本」の旧版です。新刊(社会評論社版)の方が増補された部分がありますので、今から新規で買うのであればもちろん新刊の方をオススメしますが、まあコレクターズアイテムということで。後者はそのつながりでご紹介をいただいた、同じ出版社(風早書林)から出ていた別の著者の本の、自費出版版です。Amazonなどでもかなり評価が高いようなので、歴史に興味がある方は是非ご確認ください。いずれも特別価格1000円にて販売予定です。

念のため、最終告知です。
コミックマーケット79
場所: 東京ビッグサイト: ゆりかもめ「国際展示場正門前」駅またはりんかい線「国際展示場」駅下車
出展日: 12月31日(金)(3日目)10:00~16:00
東Q-50b「事件研究所」

『津山事件の真実(津山三十人殺し)』
A5版350ページ、販売価格3,900円
付録: 津山事件報告書(昭和14年、司法省刑事局編著)

コメントの方でご質問をいただいた通販に関しては、現在検討中です。決まり次第告知します。いずれにしても年明け以降で、かなり時間がかかるかもしれませんので、あらかじめご了承ください。

 

津山事件: 冬コミ告知 その4

相変わらず原稿書いてます。本にしようと思って原稿を書くのはなかなか難しいものですね。

冬コミについて告知です。

コミックマーケット79
場所: 東京ビッグサイト: ゆりかもめ「国際展示場正門前」駅またはりんかい線「国際展示場」駅下車
出展日: 12月31日(金)(3日目)10:00~16:00
東Q-50b「事件研究所」

津山事件本を販売します。
A5版300ページ程度(予定)、予定価格3,900円
付録: 津山事件報告書(昭和14年、司法省刑事局編著)

  • 印刷部数が少ないため、高めの価格設定になっています。同人誌とはそもそもそういうものですので、ご理解をいただけると幸いです
  • 被害者の写真など一部の図版については、コミケの規定や東京都の条例を考慮して割愛する予定です。文句がある方は石原都知事にどうぞ(笑)。それ以外の文章部分に関しては、原本をほぼそのまま丸ごと収録予定です。作業が膨大になるため、特に墨塗り等は行いません
  • 本ブログで発表済みの論説の再録が中心です。ただし、新規の論考も加えています

当日は委託販売も行う予定です。委託販売本については後ほど告知します。

コミケにいらっしゃったことがない方へ: 大変混み合う場所ですが、礼儀正しいオタクの方々の集まりなので、基本的に怖いことや危ないことはありません。ただ、当日(3日目)は男性向けエロ系同人誌が中心です。そういう方面に免疫がない方は心の準備をお願いします。時間帯によって入場制限もあるため、いらっしゃる場合には充分な時間的余裕を持っておいでください。

 

津山事件: 昭和13年当時の銃規制について

こちらの記事で戦前の銃規制について書きましたが、もっと詳しい記載が『津山事件報告書』の守谷芳検事の論文にありましたので、いろいろな方面で参考になるのではないかと思い、引用しておきます。

猟銃が拳銃短銃等と共に銃砲火薬類取締法に所謂非軍用鉄砲の一種であることは同法の解釈上疑がない。然るに同法施行規則は拳銃短銃仕込銃等に就てのみ厳格な規定を設けているが猟銃に就ては何等規定する処がない。従って之が授受運搬等に就ては何等の制限がない。鉄砲火薬商は何人に対しても何等の手続も警戒もなさずに猟銃を譲渡する。而して警察の許可があれば勿論のことだが狩猟期間中狩猟免許証の提示さえあれば、雷管付薬莢は二千発まで、弾丸に使用する火薬は一回に一貫三百匁以内(四、八七五瓩)を自由に販売し得る実情にある。(中略)此の一回の制限量は裕に実弾千発を発射することができる。而して本件犯行に使用された弾丸の鉛の如きは単なる鉛塊であって何等警察取締の対象でない。之を要するに猟銃に対する警察取締は、狩猟免許を為すに際し相当厳重な身許調査を為すこと及一狩猟期間中に於ける使用残火薬は警察官を臨検検査せしむるに止る様であるが之のみを以ては甚不十分であると思う。

銃砲火薬類取締法自体を読む限りでは製造・販売業者のみを対象とするように読めましたが、施行規則の方で拳銃や短銃に関しては個人の購入・所持などにも規定があったようです。しかし、いずれにしても猟銃や、弾丸・薬莢の購入・所持はほとんど野放しで、身分証明書の呈示すら求められませんでした。火薬も、狩猟免許さえ持っていれば1回に5kg近くも普通に購入できたとのことで、戦前の日本で手製爆弾や手製の火砲によるテロ事件が起きなかったのはなぜか、逆に疑問になるくらいです。

守谷検事はこの点について「私は現在の爆発物取締罰則、銃砲火薬類取締法に基く諸法令並狩猟法等では甚不十分で可及的速に猟銃及之に使用する火薬に就て相当厳重な取締規定を制定すべきだと考える」と述べています。
その後、戦前にそのような銃器所持規定の厳格化が行われたかどうか、私(本ブログ管理人)は法学の専門家でないので存じ上げません。ただ、この文章が書かれた1939年(昭和14年)は既に日中戦争が本格化しており、その後中学校でも三八式歩兵銃を使用した軍事教練が課されていくようになっていく時代状況の中では、そのような厳格化は行われなかったのではないかと思います。

いずれにしても、1938年(昭和13年)3月の警察による手入れでいったん銃や火薬、狩猟免許まで取り上げられた後、5月の事件までの2ヶ月程度で睦雄が再武装を完了できた背景には、戦前の日本における銃規制がかなり緩かったことが影響していることは間違いないでしょう。

 

津山事件: 中島病院

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中島病院旧本館(現・城西浪漫館)

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現在は喫茶室として一般公開されている

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中島琢之医師。おそらく睦雄を診察した

今回も以前訪問した際の写真のお蔵だしです。

都井睦雄は、当初は加茂の万袋医師や只友医師の診察を受けていましたが、津山の中島医師の診察も受けていました(診断は肺尖(カタル))。そのことは睦雄の親類(おばやんの甥)である寺井元一の証言にも出てきます。当時、肺病の人は診断や治療に納得がいかず医師を転々とする人が多かったとのことで、睦雄もそのご多分に漏れなかったようです。

中島琢之氏は津山出身で東京帝大医科大学を卒業し、請われて郷里に戻っていったん病院を開設したものの、最新の医学から取り残されるのをおそれて再び東京へ出たい意向を洩らしていました。すると、友人でもあった地元の銀行家が中心となって、この建物(中島病院旧本館)とレントゲン装置などを含む当時最新の医療機器を揃えて引き留めたため、引き続きこの地で診療を続けることになったとのことです。
そのような経緯から設備・医師とも当時のこの地方では最高峰の評判が高かったようで、睦雄がセカンドオピニオンを求めにわざわざここまで来たのもそれが理由でしょう。

中島病院は現在も津山市内にあり、構内に旧本館がそのまま保存されていて「城西浪漫館」として公開されています。上記は先日立ち寄った時の写真です。どこが診察室だったかわかりませんが、こんなところまで睦雄が来ていたかと思うと感慨深いものがあります。

 

津山事件: 冬コミ告知 その3

すいません。全然原稿進んでいません。このままだと付録だけで出すことになるかも。

…逆に付録だけの方が喜ばれるかもしれませんが(笑)

前回の続きでいろいろ調べてみると、戦前の「銃砲火薬類取締法」は、基本的に業としての銃砲火薬類の製造販売・輸出入を取り締まる法律であって、個人の銃器所持を取り締まる法律ではありませんでした。少なくとも私が調べた昭和8年版六法全書に掲載されている銃砲火薬類取締法ではそうなっています。そういう意味ではWikipediaの記述は結構適当だなあ、と改めて確認した次第です。

結局のところ、戦前には個人の銃器所持を取り締まる法律は存在しなかったようです。火薬に関しては狩猟法に規定があり、狩猟免許を所持していない者に販売してはいけないことになっていましたが、それも抜け道が多かったようです。睦雄も、警察の手入れで狩猟免許とすべての銃器・火薬を任意で提出した後も、隣村の狩猟免許保持者に依頼して火薬を買ってもらっていました。銃については偽名を使って購入しており、「津山事件報告書」でもそれは問題にされていません。要するに、銃自体の購入には身元確認が必要なかった、ということでしょう。

睦雄に依頼されて火薬を購入した男は、罰金20円という当時としてはかなりの厳罰を食らいました。
重大事件の原因を作ったことで厳罰になったという見方もできるでしょうが、司法当局が同様の犯罪を防ぐ目的で恣意的に重罰を科した、という印象を受けます。このあたりは、市井で話題になった事件には妙に厳罰が下る現在の司法状況と同じニオイを感じます。

他方で、津山事件の後、津山警察署長(警視)と西加茂駐在所を管轄する警部補は退職しました。警部補については、睦雄の親類からの訴えで睦雄の家を家宅捜索したことについて、「大げさすぎる」と現場の巡査を叱責したことが問題になったようです。その一方、駐在所の巡査は異動になったものの退職はしていません。この点においては、当時の警察はまだ健全であった感じがします。現在の警察・検察であれば、まず間違いなく現場の巡査をクビにして、署長や上司は戒告あるいは減給程度で済ませるところでしょう。村木問題で前田検事にすべての罪をかぶせてケリをつけようとしているように。

 

津山事件: サムハラ神社 奥の宮

いつも大阪に出張したときに泊まるホテルのそばにサムハラ神社があることに、先日気が付きました。「サムハラ神社」は、弾避けに霊験あらたかということで戦前・戦中にかなり広まった宗教です。

「サムハラ」は本当はUnicodeに入っていない漢字(「神字」だそうです)を書きます。こちらのブログにある画像をご参照ください。なにしろPCでは出せない字なので以下「サムハラ」と記述します。

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津山事件: 冬コミ告知 その2

冬コミ用の原稿を書き始めています。

概説的な文章を書くことで、初めて気が付いたことがいくつかあります。

  1. 筑波昭さんは臨場感あふれる襲撃シーンを書いています。しかし、実は、「津山事件報告書」でも都井睦雄が襲撃した家の順番は確定できていないようです。大阪毎日新聞が襲撃順を推定していますが、筑波本とは違う順番です。当時の地図と筑波本の襲撃順を照らし合わせると、筑波本で記述されている襲撃順はあっちへ行ったりこっちへ行ったりと、かなり無駄が多いことがわかります。
  2. Wikipediaでは、明治時代から日本では銃の所持に許可が必要であったように書かれています。しかし、少なくとも昭和13年当時は銃と実弾は狩猟免許なしでも購入できたようです。狩猟免許を呈示しないと購入できなかったのは火薬だけで、免許を取り上げられた睦雄は隣村の知人に依頼して火薬だけ購入してもらっています。

現時点で私は、筑波本はノンフィクションではなく実在の事件を元にしたフィクションであると考えています。そう考えるようになったのは今年に入って「津山事件報告書」の実物を入手してからですが、筑波本のほとんど全てが鵜呑みにできない、再確認が必要な状況ではないかと思います。

ちょっと仕事も多忙になっているため冬コミに間に合うかどうかわかりませんが、折角の機会なのでできるだけ頑張ってみようと思います。

 

その他: 冬コミ告知 その1

試しに冬コミに申し込んでいたら当選してしまいました。3日目(12月31日)東Q-50bです。3日目ですがエロはありません(笑)。

津山事件関係でコピー本を作ろうかと思っています。「付録」の方が分厚くなりそうで、その分かなりお高くなると思いますが、ご期待に沿える物を作るべく頑張りたいと思います。今後、詳細決まり次第この場で告知しますので、よろしくお願いします。

その他: 伊吹氏の新連載開始

伊吹隼人氏の新連載が、なぜか「ナックルズ」本誌ではなく「ナックルズ・ザ・タブー」の方に掲載されたとのことです。
ちなみに、「ナックルズ・ザ・タブー」はナックルズ本誌とは異なりB5変形版(ナックルズ本誌より小さい)なので、書店で探すときは注意してください(私も見つからなくて迷いました)。

13歳の少女の「失踪」事件に関するルポです。伊吹氏のルポ自体はいつものとおりの伊吹節なのですが、編集の方で「こういう事件を起こす奴がいるから児童ポルノが厳しくなる」という形で児ポ法関連特集記事の中にはさみ込まれていて、正直ちょっと違和感があります。
現在の児童ポルノ法改正案の問題点は、いわゆる「非実在青少年」が描かれた作品、ならびにその単純所持を罰するかどうかという点にあるわけで、13歳の実在の少女を誘拐する事件とはいわば無関係です。まあ、そういう理論付けをするまでもなく、特集の中でちょっと異質になってしまっているのは一読して明らかですが。

繰り返しになりますが、伊吹氏のルポ自体は、現地での取材を含めたかなりの力作だと思います。ここで詳細を書くのは差し控えますので、機会があればご一読ください。