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津山事件: 『あの事件を追いかけて』

ちょっとまた、海外・国内出張が重なっていて更新が滞っています。申し訳ないです。

今回も軽めの内容です。

『あの事件を追いかけて』という本で、津山事件が採り上げられています。オフィシャルブログはこちら

津山事件に関してはページ数も少なく、取材も「地元の人に話を聞いたが話してくれなかった」という程度の内容ですので、津山事件関係で期待してこの本を買ってもあまり満足は得られないと思います。鎌田慧さんも時評を寄せていますが、津山事件に関してはおそらく筑波昭氏の創作である阿部定事件と睦雄との関係に終始しており、こちらもそれほど見るべきものはありません。
さらに、秋葉原無差別殺人などの記事もいかにも表面的な取材と、オタク文化に対する無理解を晒しています。

しかし、著者が一番メインで追いかけているホテルニュージャパン火災現場跡地の写真はさすがに圧巻です。「高級ホテルの証だったビデ」などの考察も充実しており、一読に値します。他にも埼玉愛犬家連続殺人や山口組田岡三代目の襲撃現場の取材などでは、取材した方の熱の入り方が伺えます。

全体として、事件ごとに取材の浅深が極端で、ツッコミが浅い事件は「興味ないんだろうなあ…」というのがありありとわかります。反面、それだけに、突っ込んで取材している事件はかなり面白く読める本です。自分(本ブログ管理人)自身の、事件ごとの熱の入れようやツッコミの深さについて反省もさせられました。
最近の単行本高騰の中で税込み1000円という良心的な価格でもありますので、昭和の様々な事件を概観したい方、ホテルニュージャパン火災事件に興味がある方にはお勧めします。

ちなみにここの出版社は、池田大作より他に神はなしというアブない連載をブログに載せている点で大変度胸というか志のある出版社ではないかと思います。(…一応誤解がないように書いておきます。この連載の意図がわからない方は、このエントリがアップされた日付、ならびにコメント欄のやりとりをよ~くお考えください)

今後いろいろな意味で、この出版社には注目していきたいと思います。

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その他: 伊吹氏の新連載

伊吹隼人氏が、「実話ナックルズ」で新連載を始めるとのことです。

タイトルは「消えた少女たち」。

行方不明になった少女たちと、その帰りを待ち続ける家族を追ったノンフィクションです。

とのことですので、是非ともご覧になってみてください。

実話ナックルズ

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下山事件: 文藝春秋の柴田哲孝氏の記事

shimoyamajiken_saigonoshougen_bunko
『下山事件 最後の証言 完全版』(文庫版)

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『下山事件 最後の証言』(単行本版)

今売りの「文藝春秋」10月号「真相 未解決事件35」という特集の中で、下山事件が採り上げられています。記事を書いているのは柴田哲孝氏。当然ですが他殺説で決定済み(笑)という内容になっています。

今回の記事で気になったのは下記のような記述です。

事件の三日前の七月二日夜、下山総裁は西銀座の『出井』という関西料理屋にいた。その店で誰と会っていたのかも、重要なミッシング・リンクのひとつだ。

数年前、この出井にいた謎の人物に関して、「財界の大物のSとMという男だった」という確度の高い情報提供があった。

相変わらず、ソースを示すことなく、別の言い方をすれば検証ができないようにそれっぽい情報を書くのがうまいですね。さすがはサスペンス作家の面目躍如といったところです。ただし、これらの情報を今後下山事件推理における「事実」として扱いたいのであれば、せめて「誰が」「いつ」「どのように」その情報を提供したのかを明かす必要があるでしょう。このままでは矢田喜美雄氏の「下山総裁の死体を運んだ男」の話と同じで、「へえ、だから?」としか言いようがありません。

柴田氏は、こういうところで下山事件に関して偉そうなことを書く前に、「『下山事件 最後の証言』文庫版と単行本版で結論が正反対になっていて、しかもその理由が全く説明されていない」というAmazon書評欄における批判に対して誠実に説明をするべきではないでしょうか?
その説明がなされない限り、今後柴田氏が下山事件に関して何を言おうと信用する人は皆無だと思います。ましてや、今回のようにソースも明かさない話を思わせぶりに持ち出されても、その信頼性はほぼゼロと言って差し支えないでしょう。

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その他: 徒然草

世にかたりつたふる事、まことはあいなきにや、おほくはみな虚事なり。あるにも過ぎて人はものを言ひなすに、まして年月すぎ、境も隔たりぬれば、言ひたきままに語りなして、筆にも書きとどめぬれば、やがてまた定まりぬ。

(徒然草)

世間で語りつたえる事は、ほんとうの事実はつまらないのか、たいていはみなでたらめだ。人は、事実以上にものごとを言いたてるうえに、まして年月もたち、場所もかけ離れたところだということになると、言いたいほうだいにでっちあげて、文章にまで記録してしまうと、それでもう事実ということになるのだ。

小西甚一『古文研究法』(上記・徒然草の文章の現代語訳)

学生時代の参考書を読み返していたら、非常に含蓄のある言葉が目に付いたので、今更ですが書き留めておきます。狭山事件でも、下山事件でも、津山事件でも、この言葉に当てはまる本や人が容易に思い浮かびます。

「年月すぎ、境も隔たりぬれば、言ひたきままに語りなして、筆にも書きとどめぬれば、やがてまた定まりぬ」
この言葉は、本ブログを続ける限り心に留めておきたいと思います。

 

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狭山事件: 『三億円事件の真犯人』について その2

joseijishin1女性自身 昭和38年6月24日号

joseijishin2女性自身 昭和38年6月24日号

こちらのエントリの続きです。かなりしょうもない小ネタです。興味がない人は読み飛ばしてください。

殿岡駿星氏の『三億円事件の真犯人』の中で、三億円事件の真犯人である「佐々木」は過去に人を殺したことがあるという設定になっていました。本人は「勝どき橋から女性を突き落として殺した」と言っていて、「町子さん」は「違うところで違う人を殺したことを隠蔽するためにそのように言ったのではないか」と推理しています。

で、私が個人的に「勝どき橋から女性を突き落とした」事件の元ネタじゃないかと思うのが本日の画像の記事です。
この記事はOTくんの目撃証言の記事の隣に出ているので、殿岡氏はこれにインスパイアされて橋から女性を突き落とした話を書いたんじゃないかな、と。場所も違うし(記事に出てくる橋は墨田区の源森橋です)、深い根拠はないのですが。

しかし、この事件もひどい話です。女性が突き落とされたのを目撃した男性が、「女性の特徴を詳しく覚えすぎている」などの理由で警察から犯人として疑われ、15時間ぶっ続けで取り調べを受けたとのことで、警察のリークに乗ってマスコミがこの男性を疑うような記事を書き立てたあたり、冤罪事件の典型的なパターンになっています。結局真犯人が見つかってこの男性は警視総監賞まで受けたそうです。逆に言えば、突き落とされたのを目撃して届けた程度で警視総監賞をもらえるものなのかな、という疑問も持ちます。単なる口止め料じゃないかと。

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狭山事件: 『三億円事件の真犯人』について

昨日の参加者の方々に業務連絡です。

殿岡さんの『三億円事件の真犯人』読了しました。
が、どうご紹介したものやら考えあぐねていると、どこかでこの本の内容についての解説を読んだのを思い出しました。記憶を頼りに探したら、2ちゃんねるの三億円事件スレでした。
【第二現場は】三億円事件【七重の塔】
このスレの>>356あたりから本の内容について触れられています。ネタバレ満載なのでリンクをクリックするときは注意してください。

私も、上記スレで「サトーハチロー」氏が書いている内容に同意します。ただ、当方、三億円事件関係の資料の手持ちが少なく、別冊宝島1574「20世紀最大の謎 三億円事件」くらいしかないので、「多摩駐在所への脅迫状の差出人名」を存じ上げておりません。「あの人」の名前に似てるんでしょうか。

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津山事件: 中村一夫氏と中村病院

IMG_2098中村病院跡地

IMG_2099中村病院跡地(反対側)

NakamuraMap1998年発行の地図

津山事件: 中村一夫『自殺―精神病理学的考察』のエントリに、中村一夫氏の「中村病院」は既に潰れており、現在も埼玉県内にある精神科の中村病院とは別物であるというコメントをいただきました。ありがとうございます。

なお、上記エントリにも書いたように、中村一夫氏の『自殺』は私が今までに読んだ津山事件本の中では最も正確性が高く、津山事件に対する愛があふれまくっていてマニアの方には是非一度読んでいただきたい本です。ただし、全部で200ページの本の中で津山事件関係の記事は40ページほどですので、その点はあらかじめご了承ください。

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狭山事件: 鎌田本文庫版 読了

『狭山事件の真実』が尼で配送されてきたので読了しました。「岩波文庫版へのあとがき」以外、特に大きな加筆修正はなかったように思います。「文庫版へのあとがき」は、ハードカバー版が出た2004年以降の裁判の経過を詳しく解説しています。再読して、前回のエントリで書いた「冤罪事件としての狭山事件の解説における一つの到達点」という評価は変わりません。狭山事件初心者の方は伊吹本とこの本の2冊をとりあえず読まれることをお勧めします。

 

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狭山事件: 鎌田本文庫化

本件、こちらのコメントで教えていただきました。

2004年の鎌田慧さんの本『狭山事件-石川一雄、四十一年目の真実』が岩波現代文庫から再版されるとのことです。個人的には、この本が岩波というメジャーな出版社から再版されることで、再審へ向かっての世論の関心がさらに高まることを期待します。

これまで何度も取り上げていますが、「狭山事件」という用語には大きく分けて2つの意味合いがあります。

  1. 昭和38年に起こった女子高生殺人事件
  2. その殺人事件の容疑者として石川一雄さんが逮捕され、有罪とされた冤罪事件

「狭山事件を推理する」サイトでも取り上げられている通り、伊吹さんの新著を上記1.の方面からの最高峰とすれば、鎌田本は2.の方面からの一つの到達点と言えるでしょう。もし「狭山事件」について何も知らないという方がいて、事件の概要を知りたいということであれば、この2冊を読めば全体は見えると思います。

本の性格から考えてあとがきを含めた加筆部分はそれほど多くないと思いますが、単行本の版元であった草思社が民事再生になったこともあり、事件に興味はあるがまだこの本を読んでいないという方がもしいらっしゃれば、一度目を通しておいて損はないと思います。

 

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下山事件: 吉松富弥氏証言

全研究下山事件サイトにて、吉松富弥氏の証言がアップされています。音声ファイル(YouTube)と文字起こしと両方あります。吉松氏は事件当時下山家の近くに住んでおり、長男(定彦氏)と友人だった縁もあって下山家に出入りして総裁とも顔見知りだったとのことです。

証言の内容は、平成元年7月21日付毎日新聞にも掲載された、

彼は下山氏の死亡が発覚した直後、直接芳子夫人から「夫は自殺したと思うが口外しないでほしい」という言葉を聞いておられます。

というものです。証言は他にもいろいろなエピソードをまじえており、当時の世相などを知る上でも参考になりますので、下山事件に興味がある方は是非ともご参照ください。

ただし、60年以上前のことでもあり、かなり明らかな事実誤認もいくつかあります。一番大きいのは、下山総裁の奥様を高木子爵の娘さんと誤認している点でしょうか。下山事件の前年(昭和23年)に自殺した高木子爵は高木正得さんで、芳子夫人の父は高木得三さんです。「得」の字が共通していますのでもしかしたら縁者である可能性は否定できませんが、芳子夫人がつぶやいたと言われる「高木子爵のようにならなければいいが…」という発言からしても、縁者である可能性も低いと思います。

他にもルミノール反応と死後轢断の鑑定を混同していたりなど、かなり大量にツッコミどころがあります。

そのことをもってこの吉松証言に信憑性がないというつもりはありません。逆に、吉松証言をもって下山総裁が自殺だったことが確定したなどと言うつもりもありません。ただ、非常に個人的に吉松氏の話に真実味を感じるのは、芳子夫人に誘われて教会に行ったくだりです。「賛美歌」と書いていたり(芳子夫人が吉松氏を連れて行ったのはカトリック洗足教会だと思われるので、正式には「賛美歌」ではなく「聖歌」です)、「お父さんの冥福を祈る」(キリスト教には「冥土」がありませんので「冥福を祈る」ことはありません)といったご愛敬はありますが、

ちょっと葡萄酒を飲んで、パンみたいなお煎餅みたいなものをいただいたりして、それは司祭さんから

という叙述には説得力があると思います。

私(本ブログ管理人)は一応カトリックの洗礼を受けた信者です。ミサにおいて、ご聖体を受けることができるのは洗礼を受けた成年の信者だけで、未信者(という単語も個人的にはどうかと思うのですが)は聖体拝領はできず祝福を受けるだけということになっています。しかし、未信者が多くミサに参加するような大きな教会では聖体を渡す前に「信者ですか?」と確認されますが、それ以外の普通の教会では確認もせず聖体を渡されることが多いのも事実です。また、この「聖体」は教義的には「パン」ですが、見た目は小さい煎餅のようなものです。そのあたりを踏まえると、この話は信者ではない吉松氏がカトリックのミサに参加した体験談として、かなりの信憑性を感じます。信者であればこういう間違いはしないだろうし、逆にミサに参加したことがなければこういう書き方はできないだろうからです。
また、普通の日本人の認識では、キリスト教の儀式を主宰するのは「神父」あるいは「牧師」でしょう。それを「司祭」(カトリックのミサの中で、実際に司祭のことを「また司祭とともに」などと言及します)と正しく表現しているところにもかなり高い信憑性を感じます。

一つ他殺説に有利な指摘をさせていただくと、カトリックでは自殺を否定しています。従って、夫人がカトリック信者だったことをもって総裁もカトリック信者だったと仮定すれば、総裁が自殺するのはおかしい、ということになります。しかし、総裁自身がカトリック信者だったという証拠はなく、そもそも夫人がカトリックに帰依するようになったのが下山事件の前だったのか後だったのか、確認するすべもありません。さらに、カトリックの国で自殺がまったくないわけでもありません。したがって、これも現時点ではどちらとも確認できないというのが公平なところではないかと思います。
事件後、夫人が「他殺」と言うようになった理由の一つには、カトリックが自殺を禁じていることがあるのかもしれません。

芳子夫人が事件後公式には「他殺」の線を押し通した理由について、証言の中では恩給が動機ではなかったかという指摘があります。下山家の財政が、その「国鉄総裁」という肩書きにもかかわらずかなり厳しかったのは確かなようで、その中で戸主である下山総裁が亡くなった後で4人の子供を育てるために恩給を得たいという動機が働いたのではないかという指摘は、私の個人的な推測と合致しています。

上記の感想はあくまでも私(本ブログ管理人)の個人的感想であり、絶対的な事実ではないことを改めてお断りさせていただきます。

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