「(被害者宅)のうら口、台所の窓口に手紙(引用注:脅迫状)がおいてあった」
正月早々に、伊吹隼人さんから「狭山事件に関する東京タイムズの当時の報道が面白い」ということでコピーを送っていただきました。ありがとうございます。読んでみると確かに興味深い記事が多いため、これから何回かに分けてご紹介していきたいと思います。
本日引用したのは、5月4日付の狭山事件発生を報じた第一報です。
この写真に関する伊吹さんからのご指摘は下記の通りです。
中でも不思議なのは、5月4日付記事で「脅迫状が発見された場所」として「うら口、台所の窓口」が紹介されていて、発見箇所(×印)入りの写真も添えられていることです。写真では捜査員らしき人物が覗き込んでいる場面が写っていますし、記者が何の根拠もなく書いた記事とも思えません。判決で確定している「事実」であるはずの「母屋入口」との食い違いは、一体何から生じたものなのでしょうか?
この件に関してはちょっと補足説明が必要かと思います。
石川さんの裁判の判決で、脅迫状は母屋の表口の引き戸に挟まれていたと「事実認定」されています。同じ5月4日付の東京新聞では、事実認定上の脅迫状の置き場所である母屋の表口を、被害者の父親らしき人物が指さしている写真が掲載されています。しかし、リンク先の説明でも書いたように、本当に母屋の表口に脅迫状がはさみ込まれていたかどうかに関してはいくつかの疑義があります。下記の画像(被害者宅見取図)もご参照ください。
- 時間:当日の夕方、被害者長兄は被害者を捜しに車で出かけており、帰ってきたのは午後7時30分頃だった。車庫との位置関係から、長兄は表口から母屋に入ったと考えられる。他方で、脅迫状の発見後、長兄は7時40分には駐在所に駆け込んでいることから、犯人は7:30~7:40の10分間(長兄が隣の家に声をかけて駐在所に行くまでの時間を考えればもっと短い)で長兄が止めた車の脇に被害者の自転車を置き、脅迫状を差し込んだことになる。例えば、長兄が車に忘れ物をして戻ってくる可能性もあるにもかかわらず、そこまでぴったりのタイミングで行動できるものかどうか
- 見られる可能性:リンク先でも書いたように表口には素通しガラスの部分がある。殺人を犯した犯人が、見られるリスクを冒してまでわざわざそこに脅迫状を差し込む可能性は低いのではないか
- 裏口:被害者宅見取図にあるように、被害者宅には裏門があった。表通りから堂々と入るより、裏門から入って家の裏手にある勝手口に挟む方が、人目につかずに脅迫状を届けられるはずである
これらの論点から考えると、犯人は被害者宅の裏口側に脅迫状をはさみ込む方が自然であり、東京タイムズの報道を「単なる誤報」と片付けることはできないという考え方も成立します。
個人的には、やはりこれは東京タイムズの誤報ではないかという気がしています。同じ5月4日の東京新聞で母屋入口説が写真入りで報道されていますし、この時点で刑札側がリスクを負って嘘のリリースを出す可能性は低いのではないかと思うからです。
ただし、上でもご説明したように現在「事実」とされている脅迫状の発見経緯が不自然であることは確かです。そのため、脅迫状は実は別の時間・場所で発見されたのではないかという疑惑も根強く存在しています。判決の認定と異なる場所で脅迫状が発見されたという報道が事件当初からあったということは、そのような疑惑を裏付けるものではないかと思います。
また、別の話として、脅迫状発見前に電話などによる第一次脅迫があったのではないかという話もあります。その点についてはこちらをご参照ください。第一次脅迫があったとすればなおさら、家人が警戒を強めている状態で表口から脅迫状を届けるようなことはしないのではないか、という考え方もできます。
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