下山事件の自殺・他殺論争において、重要な論点の一つとなっているのが「秋谷鑑定」です。他殺説論者が「物的証拠」として持ち出すことが多い「下山油」「緑色の色素」の詳細は大抵この論文(?)を論拠にしています。
この「秋谷鑑定」とは、事件当時東京大学裁判化学主任教授だった秋谷七郎氏の「鑑定書」とされているものです。しかし、実際には、下山事件は裁判にはなっていませんので、検察が秋谷教授に依頼して提出してもらったという「秋谷鑑定」は一般には公表されていません。では、現在下山事件論争において「秋谷鑑定」とされているものは何かというと、文藝春秋(週刊じゃなくて月刊の方)の昭和48年8月号に「機密文書 下山事件捜査報告」として掲載された物を指しています。(もし「そうじゃない。秋谷教授が検察に提出した鑑定書が存在する」という方がいらっしゃれば、是非ともご教示下さい)
2008年9月1日注記: 昭和39年6月26日の衆議院法務委員会に資料として秋谷教授が提出した鑑定書が提出されており、その内容が『資料・下山事件』に掲載されていました。詳しくはこちらのエントリをご参照ください。
ところが、この文藝春秋に掲載された「秋谷鑑定」(以下「文春秋谷鑑定」と呼びます)には、あまりにも疑問点が多いのです。