狭山事件: 『狭山事件 50年目の心理分析』 その1

ほぼ2ヶ月、アップデートがなくて申し訳ないです。まだ資料の整理ができていないのですが、だんだんと通常更新に近づけていきたいと思っています。

殿岡駿星さんの新刊『狭山事件 50年目の心理分析 証言に真相あり』が出版されました。まずはおめでとうございます。

まず気がつくのは、前作までの小説仕立てとは違って正面からノンフィクションとして書かれているということです。タイトルにもあるとおり、基本的には公判での証言と調書を元に構成されています。なので、こちらも正面から読み込んでいく必要があるかと思います。

まだ途中までしか読めていないので最終的な感想は差し控えますが、ここまで読んだ中ではどうも「事実」認定の甘さが目に付きます。たとえば、113ページには下記のような死体見分調書が引用されています。

は目を閉じ、口をわずかに開き、頭髪は散乱し、顔面は淡赤色を帯び鼻孔より鼻血が出血しており、右瞼に溢血点が認められた。

この「鼻血が出血」は、死体見分調書の引用としては正しいのですが、事実としては正しくありません。こちらのエントリでも引用したように、被害者を解剖した五十嵐医師は法廷での証言でこれが「鼻血」であることを否定しています。今後詳しく論じていこうと思いますが、他にも「事実」として提示されている内容が明らかに事実ではなかったり、そういう説もあるという程度だったりする部分が散見されます。まあ、ただでさえ450ページ近い本で、そういう事実関係の注釈を入れていくとキリがないということもあるでしょうか。

ただし、これまで私も気がつかなかった指摘もいろいろあります。たとえば、の最後の2行があとから付け足されたものではないかということは言われていましたが、書き方や文字の大きさだけでなく、「し」を「知」と書いたりといった文字遣いも最後の2行だけ違うという指摘にはなるほどと思わされました。


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