狭山事件: 穴掘りにかかる時間

『狭山事件』p.96『狭山事件』p.96

こちらのエントリのコメントで話があった、スコップで穴を掘ることが可能なのかという点について、亀井トムさんの『狭山事件』に実験結果がありました。

タイトルが「残土の量の実験」となっていますが、基本的には「自白」通りに穴を掘って埋めることは可能なのかという実験です。実験をしたのは石川さんの無罪を証明したい人たち(弁護人や解放同盟等)ですので、道具等明記はされていませんが自白と同じ条件(スコップを使って一人で掘る)で行われたものと考えられます。

実験の結果、「土木部員の熟練者が上記判決にある大きさの穴を掘る」(たて1m69cm、横88cm、深さ86cm)所要時間が24分14秒、元通りに穴を埋める所要時間が5分13.5秒で、30分程度で穴を掘って埋めること自体は可能という結論になっています。

石川さんはお兄さんの手伝いで土木・建築の仕事をしていましたから、その点では土木作業の熟練者と言えないこともなく、スコップを使った穴掘りとその所要時間という点では石川さんが犯人ではないという証拠にはできないと思います。

狭山事件に関する本はこちら

5 thoughts on “狭山事件: 穴掘りにかかる時間”

  1. 管理人様 穴掘りについて。昔…昭和30年代の農家で育った人は、特に男の人はフツーに土木作業員並に穴掘りは得意なはずです。農家は畑仕事以外にも土を掘る必要が沢山あって(落葉を集めて腐葉土を作る穴、肥溜め、作物の貯蔵穴、中には井戸まで自分で掘る人もいたそうです。)農家の子供達は小学生の頃から、家の手伝いと言えば草苅と穴掘りが定番なくらいで、5メートルもの穴ならともかく、雨で多少緩んだ地面を1メートルかそこら掘るのに、何も土木作業員を引っ張り出さなくても、当時の人間なら女子供でも掘れるくらいだそうです。都会の現代人が考えるような大袈裟なことではないみたいですよ。

  2. そうですね。農家の人、あるいは農村育ちの人であればその程度の穴は容易に掘れるということは、充分納得して賛同できます。

    以下は書こうか書くまいかちょっと迷ったのですが、書いてしまいます。
    私(管理人)の祖父母は土葬でした。このブログでも採り上げている津山事件が起こった加茂(貝尾)からはちょっと離れてますが、岡山県北部の中国山地の山奥で、最寄りの駅から車で小一時間かかるようなド田舎です。祖父母が亡くなったのは昭和50年代~60年代でしたので、たぶん厳密にいうと火葬にしなかったのは法に触れているんだと思います。

    で、その経験で言うと、慣れた人(普通の農村のおっちゃん)が土を掘る速さというのは子供の目から見ても驚異的でした。タテ棺というのでしょうか、死んだばあちゃんが体育座りの姿勢で入るような木製のお棺で、おそらく1辺1m以上ある立方体に近い形状の棺を埋める穴を、参列者が見ている目の前で見る見る掘っていました。時間は正確には計っていませんが、おそらく十数分程度だったと思います。

    ちなみに、この経験はもう一つのことを私に教えてくれました。それは、普通の土葬でも墓石の真下に遺体は埋めない、ということです。それまで当然、棺を埋めた上に墓石を置くものだと思っていた私にはそれはかなり新鮮で、親に、「なんで?」と聞いた覚えがあります。その答えは、「時間が経つと棺も遺体も腐るから、上に墓石を置いたら崩れて倒れる。それは困るので墓石の近く、墓地の中に埋める」とのことでした。場合によっては埋めた上に墓石を立てることもあるが、その場合には定期的に掘って埋め直して、墓石が倒れないようにしなくてはならず、結構なお金持ちくらいしかそれはやらないというような話でした。

    「狭山事件を推理する」サイトの方で、被害者宅は「両墓制」ではなかったという議論があります。上記の経験から、私はその議論を支持しています。

    ちなみに、この「両墓制」云々も説明するとかなり長くなります。要点だけをかいつまんで書くと、

    1. 被害者の家では「両墓制」という特殊な埋葬様式を継承している。
    2. 「両墓制」というのは、「拝み墓」と「埋め墓」とを全く別の場所に設置する埋葬方法である。
    3. 被害者の死体の埋め方はその「両墓制」を擬したものである。
    4. したがって、犯人は「両墓制」=被害者の家の埋葬様式を知っている身内である

    という説で、亀井トム氏が『狭山事件』などの本で一貫して主張している内容です。ところが、上記サイトで議論されたように被害者宅が両墓制ではなかったとすると、この議論は根底から覆されることになり、犯人=被害者の身内説の状況証拠が一つ消えることになります。

  3. 管理人様 お墓の事は狭山事件のサイトで初めて知りました。土葬時代の習慣はうちの親でも知らないような話で、ひとつ知識が増えました。ただ、人を殺して、人目を避けて慌てて埋める時に、とっさに正規の埋葬ルールなんて考えつくとしたら、若い人ではなくて年寄り…そういう知識があって、すでに何度もお葬式を体験したような人では?若い人にしては冷静過ぎる気がして、現代のチョット精神を病んだマニアックな犯罪者のようなタイプなら別だけど。単なる偶然(両墓制)に近い結果になったのか、又は規定に則って(両墓制)を再現したのかが興味あります。

  4. ご無沙汰しております。
    この残土実験について、実験の本題とは異なるのですが、お訊きしたいことが有ります。

    それは、実験を挙行した「(当時の)場所を特定する施設名」に行き当たりません。

    実施当時の、施設名が記載されている文献なりインターネット情報がありましたら、お教え頂ければと思います。宜しくお願いします。

  5. すみません、「施設名」は記載されていましたね。大変申し訳ありませんでした。

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