あけましておめでとうございます。
正月休み中に『下山事件全研究』を読み直していたら、その5で保留した秋谷教授ご自身の「文春秋谷鑑定」に関するコメントが見つかりました。灯台もと暗しですね。
まず、秋谷教授の法医学教室で助教授を務め、下山事件関係でも実際の鑑定作業の多くを担当した塚元久雄氏(のちに九州大学薬学部教授)のコメントとして、「これはちがうな。あとのほうになるとまるで推理小説だね。僕は鑑定書とはおもわんね。」「僕が書いてこなかったことや、知らないことがだいぶある」という発言が出ています。また、塚元氏は「これは誰かの手が入っているな。Yじゃないのかね。『失血死』につながるなんてのは、彼がいっていたことと同じですよ。事件当時はショック死だったはずじゃない?」と、外部の「Y」氏がこの「文春秋谷鑑定」を書いたのではないかという推理も披露しています。
しかし、他方で、秋谷教室の筆頭助手であった原田氏のコメントとして、「文春秋谷鑑定」の発表直後に、秋谷教授が「少しおちている(省略している)ところあるなァ」と発言した、と書かれていて、少なくとも事前に原稿に目を通していた口ぶりになっています。
さらに、佐藤氏と秋谷教授のやりとりのなかで、秋谷教授自身が鑑定について「公的な責任を感じて居り」、さらに「文春秋谷鑑定」の真贋について確認を依頼した際には、肯定も否定もしていないものの「小生の良心が固く小生をせめております」と表現しています。
まとめると、状況としてほぼ確実に言えることは下記の通りです。
- 「文春秋谷鑑定」は、秋谷教授が書いた「鑑定書」ではない。(書いたのが「Y」氏であるかどうかは別として)
- しかし、秋谷教授自身は発表前にその内容を知っていた。
秋谷教授が「文春秋谷鑑定」の発表前に内容を知っていたと言うことは、暗黙的にか明示的にかは別として、その内容を文春に持ち込むことにOKを出したものと考えられます。そうなると、「小生の良心が固く小生をせめております」という表現は、「まるで推理小説」な「文春秋谷鑑定」が世に出ることについてOKを出し、また、発表後に明確な否定をしなかったことについてではないか、というのが本ブログ管理人の個人的な推測です。