狭山事件: 被害者の後頭部の傷

被害者の後頭部1被害者の後頭部の写真 『狭山事件公判調書 第二審』より

被害者後頭部その2被害者後頭部その2

ようやくPCが戻ってきました。まる1ヶ月以上更新が滞ってしまいましたが、今後できるだけ更新していきたいと思っています。

さて、先日殿丘駿星さんのメルマガ「コラム・ゆりかもめ」において、狭山事件被害者の後頭部に残された傷について指摘がありました。とりあえず当該の写真をうpしておきます。上の写真はふつうにスキャンしたもの、下の写真は、頭の上に置いてある目盛りが見えるようにコントラストを上げたものです。この目盛りについて、1目盛りの大きさは明記されていませんが、頭の大きさ(16歳女子なので頭の幅は15~20cm程度でしょう)から考えると一目盛りは1cm、従って傷の大きさは1.5cmというところと思われます。後頭部に1.5cmというのはかなり大きな傷であり、殿岡さんが指摘しているように生前に受けた傷であればここから相当量の血液が出たと思われます。しかし、裁判における弁護側の再三の証拠開示請求にもかかわらず裁判所と検察は「殺害現場」の血液反応検査結果を開示していません。日本で初めてルミノール液による血痕反応の検査が行われたのは昭和24年の下山事件の捜査でしたので(ある意味(笑))、昭和39年の狭山事件当時には当然のように「現場」(「殺害現場」だけでなく、一時的に死体を隠していたという「芋穴」や、その途中の運搬経路とされる農道を含めて)のルミノール検査は行われたはずです。このようなかなり基礎的な事項についても裁判所と検察が証拠開示を行わないという事実が、狭山事件が「暗黒裁判」と言われる一つの大きな要因になっています。

2008年12月23日追記: 後頭部の傷は、公判調書で公表された鑑定書(五十嵐勝爾埼玉県警技師医師作成)によると長さ1.3cm、幅0.4cmとのことです。こちらもご参照ください。

現在の確定判決のストーリーにおいて、様々な「現場」にルミノール反応が出ているのであれば、検察としては重要な物証としてそれを喜んで提出するはずです。しかし、現実には検察と裁判所は一体となってそれを拒んでいます。ということはルミノール反応は出なかったと判断せざるを得ません。要するに、狭山事件の真犯人を推理するにあたって、現在確定判決が認定している殺害場所は真実の殺害場所ではあり得ず、推理する立場としては別な「殺害現場」を想定せざるを得ないということです。

実は、狭山事件の推理においてこういうことは結構頻繁にあります。より一般化すると、これだけ大きな問題になった狭山事件裁判において、弁護側が開示請求したのに開示されない証拠類については、何らかの意味で検察側に不利な事実が示されているものと推定せざるを得ず、「検察に不利」=現在の確定判決の認定事項は間違っているというところから推理をスタートする必要があるということです。

言うまでもなくこれは不幸な状況です。2ちゃんねるのスレなどで、「狭山事件とか袴田事件は、現在開示されている証拠だけを見れば冤罪に見えるかもしれないが、裁判官だけが見られる証拠(インカメラ)があってそれを根拠に有罪判決が出されている。お前らシロウトは口出しするんじゃねえ」という趣旨の書き込みがなされることがあります。しかし、私(管理人)が知る限り現実には日本国の法律でインカメラの手続が認められているのは民事訴訟(特許法関係で、公開することによって公開者に不利益が発生する場合等)だけであり、刑事訴訟においてインカメラ手続を持ち出すこと自体が間違いだと思います。私も法律の専門家ではないので断言はできませんけれども。とにかく、そういったインカメラの証拠があるのであれば、それを含めて是非とも開示してもらいたいと思います。「開示請求にもかかわらず裁判所や検察が証拠開示を拒否しているので、その部分については検察に不利な形が真実であると推定せざるを得ず、ひいてはその、検察に不利な状況が事実であることを前提として推理を組み立てる」というのは、法治国家たる日本国において健全な議論ではないのは百も承知です。しかし、現実の日本の司法状況においては、「真実」に少しでも近づこうと考えるとやむを得ないアプローチであり、そのようなアプローチが必要になる責任は、明らかに弁護側ではなく裁判所ならびに検察にあることだけは断言します。

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