『知っていますか?狭山事件一問一答』より 被害者の遺体の状態
5月2日深夜(5月3日午前0時過ぎ)にさのヤで犯人を取り逃がした刑札は、5月3日午後7時のNHKニュースで事件の発生を一般報道し、公開捜査に切り替えました。しかし、実際は5月3日の午前中から地元の消防団員なども動員した大規模な山狩りが開始されており、実質的には3日から既に公開しているも同然の状況だったようです。
そして、5月4日午前10時30分、山狩りの消防団員が被害者の遺体を発見しました。場所は入間川駅(現狭山市駅)にもほど近い畑の中の農道でした。狭山事件関連地図もご参照下さい。
発見された被害者の遺体には、いくつか奇妙な工作が施されていました。
- 被害者は学校のセーラー服姿だった。セーラー服はあまり濡れていなかった
- 頭の上には、玉のような石(一番長いところで20cmほどの外径がある、かなり大きい石)が置かれていた
- 被害者はうつぶせに埋められていたが、顔の下にはビニールが敷かれていた(上の図には書いてありません)
- タオルで目隠しされていた
- 手ぬぐいで両手が後ろ手に縛られていた
- 首に木綿の細引きヒモが結びつけられていた。ヒモは「ひこつくし」(すごき結び)という結び方だった
- 足首にも木綿の細引きヒモが結びつけられていた。木綿細引きヒモはさらに荒縄に縛り付けられており、その荒縄の端にはビニール風呂敷の切れ端が結びつけられていた
- ズロース(パンツ)は半分ずり下げられた状態だった
- 遺体発見現場の近く(200mほど先)の芋穴(収穫したサツマイモを保存しておくために畑の近くに掘ってある穴。深さ3m近くある)からは、長さ90cm程度の棍棒とビニール風呂敷が発見された。そのビニール風呂敷は、上で説明した荒縄に結びつけられた切れ端から切れた残りの部分だった。
- 遺体の上方には、茶の葉が撒かれていた
これらの遺体に残された状況が何を意味するのかについて、いくつかの解釈があります。一番有名なものは、亀井トム氏による「両墓制」の解釈でしょう。先日コメントの方にも書きましたが、かいつまんで説明すると下記のような内容です。
- 被害者の家では「両墓制」という特殊な埋葬様式を継承している。
- 「両墓制」というのは、「拝み墓」と「埋め墓」とを全く別の場所に設置する埋葬方法である。
- 被害者の死体の埋め方(特に「玉石」)はその「両墓制」を擬したものである。
- したがって、犯人は「両墓制」=被害者の家の埋葬様式を知っている、被害者の身内である
ところが、「狭山事件を推理する」サイトの方で、被害者宅は「両墓制」ではなかったという議論が提示されています。詳細はリンク先を読んでいただきたいのですが、私(管理人)はこの結論を支持しています。被害者宅が両墓制ではなかったとすると、この議論は根底から覆されることになり、犯人=被害者の身内説の状況証拠が一つ消えることになります。
しかし、「両墓制」の議論を否定するにしても、犯人は何のために玉石やら目隠しやらヒモやら荒縄やらを被害者の遺体に取り付けたのか、という謎が残ります。
この遺体発見については、「発見者」とされる人が二人いるという奇妙な状況もあります。詳しくは下記をご参照下さい。
遺体の状況等については下記をご参照ください。
管理人様 衝撃的は写真&イラストでした。昨夜は夜中に見たので怖くなり、コメントどころの心境ではありませんでした。今になって気になる事は、目隠しや紐、下着の状況ですが、埋める前にこれらの作業をわざわざしたとなるとスッゴク不思議ですが、殺す前のまま外さないでそのまま埋めたのではないでしょうか?目隠しは被害者の顔を見るのが怖いから外さなかった…または後から付けた可能性は?遺体の目は閉じていたのでしょうか?ビニールを敷いたのも謎ですが、埋める前に顔を包んでいた可能性はないですか?また、下着は降ろしたのではなく、穿かせようとしたけど上手く掃かせられなかったとか…?私は子供の頃、オネショした弟のパンツを替えるように言われたけど、眠って起きない弟にパンツを穿かせるのがスゴク大変でした。意識のない人の足腰ってすごく重いんです。犯人は結構動揺していたし、かなりいい加減な奴だったような気がします。死体が早く見つかってほしかったのなら、別にわざわざ埋めなくてもよかったのだから一応は隠す気はあったのだろうと思います。でも死体がいつ発見されるかどうかより、先ず自分が逃げられるかどうかの方が優先だったでしょう。石は何だったのでしょうね?。
すいませんいろいろリアルの方で忙しくてコメントに反応できていません。
狭山事件の証拠の中で、「三大物証」に関しては言わずもがな、脅迫状ですら刑札による捏造が疑われることがある中で、唯一100%信頼できるのが遺体とその状況です。そのため、遺体状況と解剖結果については引き続き多少の解説を加えていきたいと思います。
ご質問の件については、私も確実な回答は持っていません。というか、そのあたりの解釈について「正解」がわかれば狭山事件の謎を解いたも同然という(前にもこの言葉を使いましたけど)ことになるのではないかと思います。
目隠しに限らず、全体的に、遺体に施されていた工作が被害者の生前に行われてそのまま放置されたものか、死後に偽装のためにやったものかという議論があります。例えば後ろ手に縛った手ぬぐいについて、妙な縛り方をしてあることから死後に偽装のために縛ったのではないかという説があります。真犯人は顔見知りで、監禁時には別段の拘束を必要としていなかったが、通りすがりの犯行を装うために後ろ手に縛ったという説です。目隠しについても同じような議論がありうるでしょう。また、目隠しがタオルで後ろ手に縛っていたのが手ぬぐいだったという点について、1人の人がタオルと手ぬぐいを両方持っているのはおかしいということから、複数犯の状況証拠とする議論もあります。
下着について。弁護団の鑑定ではパンツ(ズロースの局部が当たる部分)に精液がついていた痕跡が見つかったという話があります。つまり、性交した後でいったんパンツを普通に穿いたものを、通りすがりの性的暴行に見せかけるために半分ずり下ろして埋めた、という説です。ただしそれが定説というわけでもなく、異論もあるというのが現状でしょう。
頭の上の石に関しては、記事本文に書いた「両墓制」の解釈の他に、掘り起こされる際に被害者の頭がスコップなどで損傷しないように上に置いたという説があります。これも、「だから、真犯人は葬式の際に被害者の遺体を見なくてはならない(そして、遺体が損傷するのは忍びないと考える)近親者である」という説につながるわけですが。
このあたりの議論については、一時期ほぼ定説と化していた長兄犯人説の影響を受けていることが多く、その点で注意が必要だと思います。