狭山事件: 『46年目の現場と証言』 その3

続きです。

  1. 実際には、処女膜が破れた原因を特定することは医学的には不可能ですし、スポーツなどで破れる例だってザラにあるんです。それに、私が取材した限りでは、善枝さんは全くの「生真面目、カタブツ」といったタイプの女の子でした。スポーツや学校行事を通じて男友達が多数いたのは事実ですが、それも決して性的な関係ということでは無かったようです。つまりは、「性的に奔放な娘」説は完全な間違いである可能性が高いんです。

    私も色々調べましたが、そうした相手を見つけ出すことはできませんでした。川越の脇田本町に住んでいた村山君という少年と文通していたという話が公判の中で出てきているので、その人の行方も追ってみたのですが、これも結局突き止められずに終わりました。あと、善枝さんは中学時代、増田一君(PTA会長のご子息)にはずっと片思いしていたようです。増田君は当時、野球部で活躍していて生徒会長、ハンサムな上に成績もトップ、ということで、女子生徒たちの“憧れの君”だったみたいですね。

    の男性関係についてです。被害者が「性的に奔放な娘」というのが亀井本に端を発するデマに近いものであることには同意します。ただし、だからといって、例えばとの関係があったとか近親相姦のような関係があった可能性まで直ちに否定されるものでもないような気もします。「性的に奔放」ではなく、特定の彼氏がいなかったとしても、そういった特定の「秘めた関係」を持つ相手がいなかったことにはつながらないと思うからです(そういう相手が存在したと言っているわけではありません)。そのあたりを確認するためにも、被害者の全文は是非とも読んでみたいところです。以前にもとりあげた「狭山工業高校の○○○○を訪れるはずだったのに」のような、ヒントになる記述がまだまだあるのではないかという気がしています。

  2. そもそも普通に考えて、高校に入学したばかりの真面目な少女が避妊もせずに性行為は行わないでしょうし・・・。これはやはり、犯人が手足を縛って抵抗出来ない状態にした上で強姦した、とみる方が自然かと思いますね。

    小生は的所見上、強姦にまま見られる抵抗痕の所見が無かった為、頭を強打された時などに昏倒した処を姦淫されたと見ておりますが、大筋では伊吹さんの考え方に同意しています。ところで善枝さんに交際していた特定の男性はいたのでしょうか?(男友達程度の者も含む)

    この件に関しては「狭山事件を推理する」サイト管理人氏の方に同意します。特に、被害者の足首には縛られたりした跡はなかったはず(それがで認定されている「芋穴の逆さ吊り」を弁護側が否定する大きな根拠になっている)であり、後頭部の傷がついた際に気を失って、その間にコトに及んだのではないかと思います。

  3. 相澤先生は張り込みの日、佐野屋へは同行しているのでしょうか?

    今回の取材で同行していることが確認されました。相澤先生もそこでは「犯人の声」を聞いているはずです。

    こちらのエントリのコメント欄のサノや同行説には否定的なことを書きましたが、同行していたことが確認されたとのことですのでこの部分も撤回します。

このほかにも、従来「定説」として推理の前提になっていた「事実」のいくつかが今回の本によって覆されることになるようで、これまでこのブログで書いてきたこと(特に「狭山事件入門」の項)もかなり修正が必要になりそうです。(「狭山事件入門」の続きをサボっている言い訳でしたw)

2 thoughts on “狭山事件: 『46年目の現場と証言』 その3”

  1. 狭山事件に限りませんけれど、「定説」というか、一般に広く正しいと思われていることが、よくよく調べてみると合理的な根拠を欠いていたりするというのは結構よくあることなんじゃないかと思います。様々な文献を調べることで、定説が間違っているのを発見できればいいのですが、狭山事件の一部の著者のように、いい加減な取材・調査をしていた場合、それを一般読者が証明するのはほとんど不可能に近いですよね。その意味で地道な取材の成果である狭山事件の新刊本は私も楽しみにしています。

  2. 当のその掲載サイトの制作者としてコメントさせていただきます。著作の内容にあまり直接に踏み込まない程度或いは著者として出版前に「これは現段階でネット上に出しても良い」と判断されたことのみを掲載させていただいてる事は、当該頁でも記した通りです。

    それに付け加えますと、小生自身もまだ個人的には、サイトに掲載した程度の話しか伺っておりません。つまり小生サイトに掲載した内容が、小生も含め、一般読者が現在知り得る事柄の全てです。オフレコ的な内容は今の処ほとんどありません。あるとすれば、それは「被害者の日記」の内容ですが、これにつきましては出版後にはあらためて読ませていただけるお約束となっています。可成り重要な一次資料ですから、本そのものと共に、こちらも期待しています。

    それでも、相澤先生が佐野屋へ行っていたと言う証言や、被害者の放課後の足取り、被害者の交友関係や人物像など、けっこう今迄に無かった(且つこのエントリでも指摘されているように亀井本などで妄想的に膨張させられていた)事実も知る事が出来ました。あとはやはり、出版が待たれる処です。

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