下山事件: 「秋谷鑑定」 その3

『下山事件全研究』p.322より『下山事件全研究』p.322より

では、実際のところ蒸気機関車の下にはどの程度の油が存在するのでしょうか。

佐藤一氏が実際にとりあえず5台のD51(下山総裁を轢断したのと同型)の下に実際にもぐりこんで、布で抑えてしみだした油だけをとる方法で抽出した油の量でも51~97gであり、これだけでも明らかに「文春秋谷鑑定」の「4.5cc」がウソであることがわかります。また、この方法では下面にべっとりとついた油を含んだ泥の塊は拭き取っていないため、そういった油泥に含まれる油まで考慮すると、「車輛底部のあらゆる個所」を拭いて得られる油の総量は「おそらく『4.5cc』(約4g)の200倍をはるかにこえる量」、つまり最低でも1リットル程度と推定しています。


少なくともこの推定の方が、「D51の下面にある油の総量は小さじ1杯」よりはまともなものだと思います。そうなると、「4.5cc」を断言して強調する「文春秋谷鑑定」ってなんなの?ということになり、さらに、「おりから入庫していた轢断機関車D51561機関車の下に入り、D51がつかっていた車軸油や転輪についていた鉄粉、ゴミをまじえた油を布でぬぐい取りもした」と臨場感たっぷりに記述した矢田喜美雄は本当に現場を見ていたのか、ということも疑問になります。矢田氏がウソをついておらず、東大裁判化学教室はちゃんと機関車下面の油を調べていたとすると、この「文春秋谷鑑定」自体がニセモノということになります。

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