狭山事件: 入門編の脅迫状と事件の発覚について

『無実の獄25年 狭山事件写真集』より脅迫状画像『無実の獄25年 狭山事件写真集』より脅迫状画像(再掲)

と事件の発覚にまつわる補足です。

  1. 脅迫状について
  • 脅迫状は、一見すると誤字や当て字が多く、刑札では「知能の低い者」が書いたものと見ました。しかし、よく指摘されていることですが、最初の2行の短い文章で用件をきちんと伝えきっていること、文字の止め・はね・払いなどがきちんとしていることなどから、文章を書き慣れた人によるものではないかという説もあります。
  • 「車出」を強調することで刑札に車で来るものと思わせ、大通り中心の張り込み体制にさせた上で見事に身代金受渡現場から逃げおおせていることから、「少なくとも刑札よりは高い知能を持っている犯人」という見方も一般的です。
  • 脅迫状の宛先は「少時様」と書かれた後消されていました。この「しょうじ」に関しては、後述する「PTA会長」の兄ではないかという説もあります。また、死体発見現場近くにも「しょうじ」という名前の人はいたようです。
  • 第一次脅迫の可能性について
    • エントリで書いたように、午後5時前に最初の脅迫があったのではないかという見方があります。そして、その脅迫は当時宅に引かれていた有線電話によるものではないか、という説があります。
    • 有線電話は、当時堀兼地区1,500軒に引かれていました。事件直後に被害者の父が「犯人は顔見知りのものに違いない」と言っていたのは、この有線電話で脅迫があったからではないか、という推測もあります。
    • 有線電話に関して、外部の電電公社(現NTT)回線の電話からでも「下赤坂の○○さん宅に」と伝えればつながったのではないかという推理もあります。詳しくは狭山事件を推理するサイトをご参照ください。ただ、私(管理人)の経験(注1)からすると、有線電話と電電公社電話の接続方法はいろいろあったようなので、一概には言えないような気もします。この辺は今後の調査を待ちたいと思います。

    (注1)私の祖父母が住んでいた地域が、私が小学生の頃まで農協の有線電話でした。ただし、埼玉県ではなく岡山県の山奥です(これが私がに興味を持った理由の一つです。……とはちょっと離れたところですけど)。その経験では、「有線電話から交換を通して外(電電公社電話)に電話を掛けたり受けたりは、技術的には可能ではあるものの回線をふさぐし、マナー的に歓迎されない=共同体的には禁止された行為である」という状況でした。
    当時の有線は今で言うブロードキャストしかありませんでした。交換が「3番3番」と呼び出したとしても、3番以外の人が電話を取れば通話内容を全部聞き取れる状況というかなりおおらかなシステムで、つまり誰かが長電話をしていると、その間他の人は電話を使えないという状態でした。そのため、長時間電話をしたい場合には交換へ出向く(あるいは外部から電話が来る予定があれば交換まで出向いて待つ)ということになっていて、有線を使った電話はその待ち合わせの時間の打ち合わせのために使うだけ、となっていました。
    私の祖父母が住んでいた地域は数十軒程度の小部落だったので、それと1,500軒の加入者がある堀兼の有線とは方式が違う可能性も高いのですが。

    狭山事件に関する本はこちら

    3 thoughts on “狭山事件: 入門編の脅迫状と事件の発覚について”

    1. 管理人様 脅迫状の文字について(文字の止め、はね、払いがキチンとしているので文字を書き慣れた人…)という説があると拝見しました。小学生の姪や甥がくれたハガキやカードを見ると(止め、跳ね、払い)がシッカリされていますが、逆に書き慣れた大人の字は本人の好みや都合で(止め、跳ね、払い)は省略されています。むしろ書き慣れていない人が小学校で教えられた通りの書方で書いた場合も考えられます。ただし、教師のような職業の人はシッカリ書く習慣がついていると思いますが。また、有線電話ですが、友達のおじいさんから伺ったところ、外部からの電話は自分の番号を交換手に伝えなければならないのだそうです。

    2. 文字に関しては私の表現が悪かったようです。ここで言う「文字を書き慣れた人」というのは、文字を書けなかった石川さんとの対比において、という意味です。小学生レベルだと止め、はね、払いをきちんとできるでしょうが、幼稚園から小学校低学年の漢字を習い始めた子供は、止め、はね、払いができません。特に払いは結構難しいようです。

      石川さんの筆跡も後で出しますが、払いがほとんどできていません。それに対して脅迫状の字は、止め・はね・払いの使い分けに適当な部分はあるものの、払い方は達者で文字を書き慣れた印象がある、という意味です。

      有線電話に関する情報もありがとうございます。「友だちのおじいさん」というのは狭山に住んでいた方でしょうか?

    3. 管理人様 文字についての解説をありがとうございました。I氏がほとんど文字教育を受けていないのは各種資料から察していました。確かに初等教育を、それも熱心に受ける環境ではなかった人に(払い)は難しいと思います。書道でも習った人なら別ですが。有線電話の話は青梅の友人のおじいさんから伺いました。私の周囲に有線電話を使った経験のある人が他にいなかったので。地域や使用機種によっても違うかも知れません。また警察はその方面の捜査はしたのではないでしょうか?結果が公表されていないだけで…

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