○濱野委員長 志賀義雄君。 ○志賀(義)委員 去る四月三日の当法務委員会において、下山事件について、私は死体検案書並びに物質鑑定書の提出を請求いたしました。数日前から本日にかけて、全法務委員にこの資料が渡ったようでありますが、これを見ますと、他殺である、死後轢断である、静止状態で轢殺されたものであるということがはっきりしておりますが、東京地検検事金沢清名義で鑑定を嘱託した結果の報告が昭和二十四年十二月三十日、及び東京地検検事布施健の鑑定嘱託で秋谷七郎を鑑定人として昭和二十六年二月十九日に鑑定書の報告が出されております。死後轢断、しかも他殺であるということが書かれておりますが、これは検察序としては肯定して、この嘱託した鑑定の結果に従って今日まで捜査を進められたものかどうか。それをまず伺いたいと思います。 ○竹内(壽)政府委員 犯罪の成否に関する判断は、鑑定書が唯一のきめ手ではございませんけれども、少なくとも科学的に判断をいたしました一つの結論として、いまお読みになりましたような判断が出ておるわけであります。検察庁におきましては、この鑑定も一つのよりどころとし、その他諸般の事情調査の結果に基づきまして、他殺という疑いがきわめて濃厚であるという観点に立ちまして、今日まで検察庁の立場で捜査を続けてきた、かように承知をいたしております。 ○志賀(義)委員 それでは、この鑑定書も有力な参考にして今日まで他殺の疑いきわめて濃厚のものとして捜査されてきた。その結果、おおよそこの犯罪がどういう経過で行なわれ、また犯人がおおよそどの範囲にしぼられているということが明らかになったでありましょうか。どの程度まで明らかでありましょうか。と申しますのは、この七月五日に十五年の時効になります。そうなりまして、時効になったら、これはもう捜査を打ち切ったのだということになる。しかも、当法務委員会においては、この通常国会はきょうが最後の日であります。その点についてはどの程度まで明らかになっておりましょうか。まだ、捜査を進めているから、そこは申し上げかねるということになりますと、法務委員会では、もうきょう伺うのがほとんど最後になって、七月五日は時効だ、こういうことになる危険がありますから、その点いかがでしょうか。 ○竹内(壽)政府委員 私の聞いておりますところでは、まことに遺憾ながら、今日まで真犯人と思われる容疑者を確定するに至っていないわけでございます。その間、どういう捜査をしたかということにつきましては、いろいろ苦心があるようでございまするけれども、その内容につきまして、私ここで申し上げることは適当でないというふうに考えておるのでございます。御承知のように、この事件につきましては、鑑定としまして、死後の轢断であるかどうかという点につきまして、生体でもこういう轢断現象があり得るというような意見を述べた鑑定者もあるわけでございます。したがって、あらゆる捜査を遂げました中においては、これは自殺ではないだろうかという嫌疑もあったようでございまするし、それらの双方につきましてまんべんなく――まんべんなくということは悪いことばでございますが、あらゆる、できるだけの捜査を警察当局においてもなすったはずでございます。検察庁におきましても、検察庁も独自の立場でこの捜査に当たったのでございます。しかし結果は、いま申しましたとおり、犯人の割り出しに到達できないという現状でございます。しかし、なお今日といえども、情報その他について検察庁が受け取っておりますものにつきましては裏を当たってみるといったような捜査は引き続きやっておるというふうに承知をしております。 ○志賀(義)委員 では、鑑定書に従いまして伺いますが、はっきりしたことは御答弁願いたいと思うのでございます。  おそらく鑑定書が出たら、それに従っていろいろ捜査を進められたことであろうと思いますが、第一に、下山総裁がはいていたくつでございますけれども、「靴の色は、下山氏が自宅で常時使用していたクリームは、朱系の赤茶であって、現に塗られているクリームの色は全く異ったものである。」しかも鑑定結果の第二には、「アスファルト様物質を踏みつけた時刻以後は、この靴を誰も履いて歩かなかった。」こうなっております。そうしますと、くつはアスファルト様物質のある場所で脱がせ、おそらくよごれていた。あるいは証拠を隠滅するためかしれないが、きれいにくつを塗りかえた。そのくつのクリームの色が全然違う。このクリームの色は、あとからつけたクリームはどういうクリームであるか、この鑑定の結果でははっきり出ておりませんが、そういう点は検察庁としてはお調べになったのでしょうか。現に轢断された場所にはこのくつがありましたね。これはどういうことになりますか。 ○竹内(壽)政府委員 検察庁においては、その鑑定の結果問題とされておる事項につきましてはもちろんのこと、その他およそ推定できる、憶測できる限りのあらゆる推定、想定のもとに捜査をしておると聞いております。 ○志賀(義)委員 そうすると、そのクリームは日本製のものか、外国製のものか、どういう系統のものか、そういうこともお調べになったのでしょうか。 ○竹内(壽)政府委員 その点は確認いたしておりませんが、捜査をしているに違いないと、かように思っております。 ○志賀(義)委員 そういうことも発表されていませんから、あなたのほうでは確認されているというのに、この結果ではわかりませんから、それで私が、こういう結論だけでなく鑑定書全体を示していただきたい、そうしてさらにそれに基づいて検察庁がどういう調査をされたかを示していただきたい、こういうことを申したのは、そういう理由があるからでございます。ですからこの前も私は、なおこの鑑定書についていろいろ調査になったことも発表していただきたい、こういうことを申したのであります。これはなおあとで申しますが、その次に、桑島直樹外三名の鑑定の中に、「死因並に自他殺の別」の中に、「死因として最も考えられ易いのはショックである。又、本屍は他殺されたものと推定します。」となっておりますが、このショックはどういうことで起こったと検察庁はお考えでございましょうか。 ○竹内(壽)政府委員 この点につきましては、この鑑定の結果に書いてあること以外に、このショックをどう理解したかということは、これも捜査の中に入ることでございますので、私としてはお答えしないのが適当であろうと考えます。 ○志賀(義)委員 桑島鑑定の鑑定結果の一「傷害の部位程度」「本屍の陰莖、右睾丸、右側胸部及び四肢には、夫々出血を伴う鈍傷を存し、」となっております。「又殆ど全身に出血を伴わない離断その他の鈍創傷を存している。」そうしますと、これは法医学のABCから申しましても、前の「夫々出血を伴う」というのは生体であったときにやったものだろうということがわかる。ところがほとんど全身、今度は離断ですね。離れて切れ切れになったときには出血を伴わない。これは死体になっても轢断されてばらばらになったときには血が出るはずのものであります。これが血が出ていないというのは、この点はどういうわけかお調べになりましたか。さらに下山君の血液型はA型であるということまで鑑定の結果出ておりますが、しかれてもうばらばらになったときに出血がなかったのはどういう理由かお調べになりましたか。 ○竹内(壽)政府委員 鑑定書の理由の中に明らかにされておる事項だと思いますし、検察庁としましても、その鑑定の結果につきまして、それに伴った裏づけ捜査、そういうものを一応遺憾なく尽くして調べをしたと私は考えております。 ○志賀(義)委員 遺憾なく調べたら、そのばらばらにされた、しかれてばらばらになったときに出血を伴わなかったのはどういう理由でありますか。そこは検察庁でお調べになりましたか。それを伺っているのですが、その点はいかがでしょうか。 ○竹内(壽)政府委員 ただいま申しましたように調べておると思います。 ○志賀(義)委員 たよりない答弁ですね。これは血を抜き取ったのではありませんか。血を抜き取らなければこういう現象は起こらないのではありませんか。その点はいままでの過去の事例なんかでいかがでしょうか。死後轢断でも血は出るはずですが、これはいかがでしょうか。血を全然伴わないで死体がばらばらになるとすれば、しかもこれが他殺であるとすれば、血を抜き取ったというふうに考えるよりほかはないのでありますが、その点はお調べになった結果どういうふうに出ているか、これを伺いたいのであります。 ○竹内(壽)政府委員 その点はどういうふうに調べたか、その調べの結果を御質問でございますが、その調べた結果は、私ここで申し上げることは、先ほど来申しますように、はばかるわけでございまするが、この鑑定結果の一のところに書いてありますような現象、外見所見でございます。この所見から学問的に死体を轢断したものであるかどうかということが、先ほど申しましたように法医学的に異論もあったことば申し述べたとおりでございますし、また、当日の前夜来のひどい豪雨のあとで発見されたといったような点等、これはもう現場におきましては、詳細に調査をされたことと思いますが、その結果どうなったかということは、私としてはお答えをいたすのは適当でないというふうに考えております。 ○志賀(義)委員 その豪雨があったために血が流れた、散ったということですね。そういうふうに御答弁なさるのですか。しかし、それでもなお普通の状態ならば死体の中に残る血液もあるはずですね。死体の中に血が残っておったのか、あるいはこれを抜き取ったために死体の中に血がもうなかったのかどうか。そういう点は私でさえもすぐ疑いを持つところでございますが、いかがですか。公表をはばかると言われますが、何ですか、遠慮なさるところがあるのでございますか。これをはっきりするとぐあいの悪いことがあるのでございますか。 ○竹内(壽)政府委員 ぐあいの悪いことは捜査中の記録の内容を明らかにすることでございまして、それ以外に理由はございません。 ○志賀(義)委員 そうしますと、捜査に差しつかえがなくなったら発表されるとおっしゃるのですか。 ○竹内(壽)政府委員 それは検討いたしました上で判断をいたしたいと思います。 ○志賀(義)委員 今日まで、こういう鑑定書が出て、これを重要な参考として調べられてきて、もうあと時効になるのが迫っているときに、遺憾ながらわからない、しかも捜査内容については発表できないというのでは、私はこれはよほど何かあなた方が遠慮されるところがあるんじゃなかろうか、こういうふうに鑑定します。あなたのいまおっしゃったことはとうてい首肯できません。だからこそ、こういう結論だけでなく、捜査の過程で一この鑑定書でも、ここに至るまでの詳しいこと、なおそれによって裏づけされた捜査、こういう点について発表していただきませんと、検察庁に対しての疑惑がますます深まります。  では、もう少し伺いますが、先ほどのくつですね。轢断の現場には散乱してあった。しかも本人がアスファルト様の物質を踏んだあとが――はいていないくつですね。そのくつに何がついているか。「アスファルト様物質と緑色色素とを踏んだ時刻」、これが同一場所にあった場合はどちらを先に踏んだか。とにかく同一床面上にあるからどちらでもいいことになる。また別個の場所と考えた場合には「色素類を先に踏み、その後にアスファルト物質を踏みつけたことになる。」こうなっております。「文藝春秋」及び「改造」、当時のこの二つの雑誌に出たところによりますと、警視庁の自殺説によると、これは下山総裁があの場所に行って線路に上がるまでに踏みつけた草の色素であると言われている。しかし草の色素、葉緑素は御承知のとおり有機物質、植物性の色素です。しかるに鑑定の結果は植物性の画素は一つも出ておりません。この緑色色素は、鑑定書にははっきりと次のように、書いてあります。油蝋製のペンキかクレオンのような物質も含めての色素が、鉱物性のものですね、これを踏んでいた、こういうふうになっております。そうして、そのあとで今度はぬか油が下帯、シャツ、ズボン、こういうようなものにもついておりますね。この油のあった場所はアスファルト様物質や緑色色素のあった場所とは別個でなければならない。また、おそらく普通の屋内の平面上に、この油は数リットル以上あったと推定される。油が着衣に付着した時刻は、アスファルト物質や色素の付着以後の時刻ではないかと推定される。そうしますと、アスファルト様の物質と緑色色素のあった場所と、このぬか油のあった場所、これはこういう鑑定書が出るならば、その場所はどこであるかということを検察庁はお調べになったに違いない。お調べになりましたかどうか。 ○竹内(壽)政府委員 当然調べていると思います。 ○志賀(義)委員 その場所は、日本人の住む場所ですか、外国人の住む場所ですか、あるいはまた軍事上の施設であったかどうか。そういう点はお調べになりましたか。あるいは推定されましたか。 ○竹内(壽)政府委員 この鑑定書を見まして、志賀委員もいろいろ疑問を出されますし、私が見ましてもいろいろ疑問の点――こういう点は調べているだろうかどうだろうかという点は多々あるわけでございまして、私はその一々につきまして、これはこうなっておる、これはこうなっておるという説明は、先ほど来申しますように、私は申し上げるのは適当でないと思うのでございますが、東京地検当局としましてはあらゆる捜査をいたした。抽象的に申しますと、まことに抽象的でございますが、あらゆる調査をしました、こう申しておるわけでございまして、調査をしたに違いないわけでございます。さよう御了承願いたいと思います。 ○志賀(義)委員 そうしますと、あなたははっきり申されないけれども、あらゆる場所を捜査した。そうしますと、いまのような物質のある場所は非常に限定されますね。米ぬか油はどういうところにあるか、それが数リットルも家の中の同じ場所へこぼれておったとか、そしていまのようなアスファルト物質と色素があった、こういうところは場所が非常に限定されますね。そうしますと、あなたはここでははっきり言われないけれども、検察庁ではおおよそしぼって捜査をしたということだけはおっしゃれるのでございますね。 ○竹内(壽)政府委員 おことばの意味がよく理解――間違って理解をしておるかもしれませんが、この鑑定も、一つの、えられた資料からする一つの推定でございますので、この推定がすべて間迷いのない推定であるという前提に立って、そういうところ、ああいうところというふうに判断をしていきますことは、これは私どもの実際にやりました経験に徴しましても、必ずしも適当ではございませんので、もちろん、これをよりどころにはいたしておると思いますが、できるだけのことをやったというふうに申し上げざるを得ないのでございます。 ○志賀(義)委員 そのあとに、今度は石炭がついているのですね。右腕の黒みがかったところが、特徴のある黒みとよごれ方をしている。あたかも石炭のあったところへ、右腕が指先を先にして突き入れて汚染されたかのごとき状態、こうなっております。そして、要するに下山氏は、当日の朝から轢断現場までの間に次の場所を経たと考えられる。「(一)アスファルト様物質のあった場所、(二)色素(油蝋製のペンキかクレオンのような物質も含めて)のあった場所、(三)米糠油と鉄の破片又は粉末のあった場所」これは同時に付着したものですね。「(四)建築材料の如き塗料のあった場所、(五)石炭のあった場所、常町国鉄等に優先的に配給せられていた高カロリーのものと類似した石炭のあった箇所とも考えられる。」右腕に黒みがついている。そして指先にもついている。これが国鉄なんかで使う高カロリーの優良炭と類似したものと思われる。この石炭の場所なんかも一応は捜査なさったかどうか、その点を伺いたいと思います。 ○竹内(壽)政府委員 この辺の記述は、科学的に見た可能性の高い一つの推定だと思います。したがいまして、この推定は単なる想像ではないわけでございますので、これに相当する場所があったかどうか、あるとすればどこであったろうかというような点等につきましても十分な捜査をしたと承知をしております。 ○志賀(義)委員 そういうふうに捜査をされたところでは、自殺説と他殺説、検察庁としては結局これをどちらにとりましたか、そこから出てくる結論は。これを伺いたいと思います。 ○竹内(壽)政府委員 私の承知しております限りでは、今日でも他殺説が有力である、他殺の容疑が濃厚であるという立場に立ちまして、そう信ずればこそ捜査を放棄せずに、今日まで鋭意可能な限りの捜査をいたしてまいったのでございます。 ○志賀(義)委員 なお消化器、ことに胃の中にあった食べものの検査をやっておりますね。その結果、何を食べたかということはわからない。もうほとんど消化された状態になっていた。少なくともほとんど消化し尽くした時間、数時間ないし十数時間ということから、これは桑島鑑定書のほうでありますが、鑑定結果の五に「飲食物の種類並に飲食より死亡時までの時間、最後に摂った飲食物の種類は判定しえません。最後の食事をとってから死亡時までの時間は、数時間以上十数時間である。」こうなっております。そうなりますと、食事も与えられずに、前に食べたものはほとんど消化し尽くすほど長時間にわたってこういう作業が行なわれた。消化機能は死んでしまえばありません。死んだあとの解剖報告はこういうことになっておりますから、これは相当長時間にわたってやられた。また食事のあと相当長時間たってからこういうことが行なわれたということもわかるのでありますが、下山総裁が例の車に乗って方々回って、最後に姿を見失った場所、そこからの時間を考えてみます。そうして両方の鑑定書はいずれも死体解剖をやったのが昭和二十四年七月六日、幾日の午後一町四十分でありますが、「死後約一五、六時間を経過しているものと推測します。」というのが、桑島さん外三名の鑑定の結果であります。なお、秋谷鑑定書によりますと、死亡時刻は「下山氏の心臓の搏動の停止した時刻は、本鑑定人の測定法の結束では、七月五日午後九時半となったが、この時刻を中心に、前後二時間ずつの誤差を考えに入れると、同日午後七時半から同二時半頃までの間となる。」こうなっております。そうしますと、午前中に姿を消して死亡に至るまでの時間は相当長時間を経過していることになる。その時間の中の足取りその他についてはお調べになりましたか。 ○竹内(壽)政府委員 当時の新聞にもいろいろ記事が図面入りで出ておることを私も記憶いたしておりますが……。 ○志賀(義)委員 新聞のことを聞いているのじゃない。捜査のことを聞いておるのです。 ○竹内(壽)政府委員 捜査の結果の内容は、私先ほど申し上げたようにお答えできませんが、与えられた資料は十分検討して捜査をしたというふうに聞いております。 ○志賀(義)委員 死体が轢断されたのは翌日のまだ夜の明けない前でございますね。死体の発見されたのが七月六日の午前五時何分でございますか、そうなりますと、列車の運転その他について、当日列車が一本間引きされたということがいわれております。そういうことばあったのでございましょうか、いかがでしょう。 ○竹内(壽)政府委員 私もそういうふうに聞いております。 ○志賀(義)委員 ただいままで伺ったところでは、非常に奇々怪々の事件でございます。ケネディ大統領が殺された。前方と後方から殺したという説もある。オズワルドが建物の上から殺したという説もある。いまもって判明いたしません。しかし、これでアメリカという国にいかに暗黒の犯罪状態があるかということがわかります。これはアメリカが全世界に向かってその道徳的権威を失墜した最大の事件の一つであります。ただいままでのお話、鑑定書がこういうふうに出ておる。それから鑑定書ができてからも十四年半もたっているのに、そうしてあなた方が、あなたのことばで言えば鋭意捜査をなさっても、いまだにはっきりしないということでは、これは一体どういうことになりますか。あなた方自身で、これはやはり道徳的権威を全世界の前に失墜する状態のままこれを時効にしておくということになりますが、どうでしょう。早く時効になればいいとお考えですか、どうですか。そこのところを伺います。 ○竹内(壽)政府委員 私がいままでお答えしておりますのは、検察庁として独自の立場で捜査をした模様について申し上げてきたわけでございまして、検察庁とは別に、また警察が大きな警察力をあげて捜査をしたわけでございます。まあ、私ども検察庁に関しまして申し上げますならば、検察官の捜査にはおのずからなる限界があると申しますか、人手その他の関係で限界があるわけでございますが、限度をかなり越えて熱心にやりましたことは私もよく承知をいたしております。そういうことでありますが、結果におきまして犯人を割り出すことができないで今日に至りましたことは、検察庁といたしましてはもちろん遺憾千万なことでございますし、私どもも法務大臣を補佐する立場で検察庁関係の検察行政に携っております者といたしましても、しごく遺憾に存じます。いままでもこういう重要事件で犯人未検挙のまま公訴時効を経過した事例も絶無ではございませんが、ほんとうに申しわけない、遺憾千万であるというこの一語に尽きます。 ○志賀(義)委員 繰り返して申しますが、七月五日が時効の期限になりますが、これは将来とも、いままでお調べになった結果を絶対に発表なさらないつもりなのか。こういうところまではしぼってきたんだ、しかし最後のところを割り出すことはできなかったというような、今日までの全捜査の結果及び鑑定書の詳しいものまでも含めて、これは何らかの形で発表される御用意があるのかどうか、その点を伺いたいと思います。 ○竹内(壽)政府委員 その点について、東京地検当局にどういうふうな態度をとるべきが相当であるかということを申し伝えてはございますが、まだ結論を得ておりません。 ○志賀(義)委員 すでにある週刊誌では、いま発光されておりますものに、いろいろ下山事件のことが、暗黒に包まれたままだと出ております。きょうの夕刊あたりにも早いところ出ているものもあるようであります。今後も出るでありましょう。そうなれば、検察庁は今日まで一体何をしたのか、また警察はどうしたのか、警察の自殺説と検察の他殺説と二つありますが、そういうことについて多くの日本人は疑惑に包まれたままわからないということになる。警察でも、あの吉展ちゃんのことはいまでも全力をあげて調べていると言われるが、警察のことはしばらくおくとして、検察庁は、あと時効まで十日足らずの間ですが、これをなお極力捜査を進められるかどうか。進められるについては、さらに範囲をしぼって、ここまでは確実に進みそうだというお見通しがありますかどうか、その点を伺いたいと思います。 ○竹内(壽)政府委員 どういう見通しを持っておるかという御質問には、私十分答えられないのでありますが、現段階におきましては、いやしくも下山事件に関連のありそうな事項については、そういうものが検察庁の耳に入ります限り、その裏づけ等の調査をいたしまして、最後の最後まで捜査体制をくずさないで続けていく所存だというふうに私は聞いております。 ○志賀(義)委員 最後の最後までというのは、いつまでのことでございますか。七月五日までのことでございますか、どうでしょうか。 ○竹内(壽)政府委員 最後の時期といいますのは、公訴時効の成立いたします。月五日を一応の目標にしておりますが、ものごとの真相というものは、公訴が提起できなくなったから真相が消えてしまうものではございませんので、今後といえども、起訴ができるできぬということは別といたしまして、真相を明らかにしていくという気持ちはなおも続けていくものと思いますが、捜査という形で処理をいたします場合には、七月五日をめどにして、最後の最後までというのは、そこを一応のめどとして仕事をしていく、こういうことだと思っております。 ○志賀(義)委員 たとえば七月五日になりまして、報道機関のほうで、いよいよ時効がきょうで切れるというときになって、法務当局及び検察庁に何か発表なさる御用意がありますかどうか。ただこのままでほおかぶりじゃ済むまいと思いますが、その点で御用意がありますかどうか。 ○竹内(壽)政府委員 それは先ほど申し上げましたように、どういうふうに対処するのが検察庁として一番いいかという点を、いま東京地検のほうに考えてもらっておりますが、法務当局としてどういう態度をとるかということにつきましては、今後大臣にもよく御相談申し上げまして、最終的な決定をいたしたいと思っております。 ○志賀(義)委員 では最後に法務大臣に伺います。  前に伺いましたときに、決してこれをうやむやにしておくのではない、苦慮しているところであると言われましたが、ただいままで申されたとおりの御答弁でありますけれども、法務大臣としてはこの問題についてどういうお考えでございますか。それを伺いたいと思います。 ○賀屋国務大臣 刑事局長が申しましたとおりでございます。 ○志賀(義)委員 この前は苦慮していると言われたのです。まだ御苦慮中でありますかどうか。そこの御心境をちょっと伺いたいのでございます。刑事局長は刑事局長、あなたはその主なんだから……。 ○賀屋国務大臣 全くどうもお活のように時効が迫りますし、長い間調べてなかなかわからない。これから一生懸命やったら、あと十日のうちでわかるか、これは率直に申してどうなるかわかりませんが、そういう意味ではほんとうに苦慮しておるわけであります。発表するかしないか、五日の夕方にそういうことをするかしないか、大体は刑事局長が申し上げたとおり。実はそこが私も実際よくわからないのです。それはいろいろなことが言われますけれども、それじゃ言われたことがみなほんとうか、信ずるわけにも正直に言ってまいりません。ほんとうのところむずかしいのでございます。どうするかということにつきましては、大体事務当局の考えておりますそのとおりと申し上げるほかないと私は思います。 ○志賀(義)委員 松川事件の被告にされた人たちが無罪であるという判決は出ました。しかし真犯人はわからない。下山事件に至っては、ほかに被告としてつかまった者があるわけではなし、ほんとうにこれは全くわけのわからない事件になっているのであります。どうでしょうか、これは日本人でない者がやったんだというような推定を下し得るいろいろな手がかりは、今日までのところでございましたかどうか。そういう点はどうでしょう。 ○賀屋国務大臣 それはお答え申し上げかねます。いろいろ推定はございましょうが、やはりこれは全く重大なことでございますので……。 ○志賀(義)委員 これで最後にしますが、いままで伺ったところでは、何だか調べているようだが、さりとてどういうことをされているのか、私どももさっぱり首肯のいくようなお答えはありません。率直に言って、私は、もう法務当局も検察庁も警察も、これをほおかぶりをして済ませるつもりじゃなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。法務大臣は暴力法を通すためには一生懸命になられるが、こういうことはとんとあまり御熱心でない。そういうことでは、これは政府及び法務当局、警察、検察に対する国民の信頼が失われる。それで暴力を取り締まると言ったって、これはなかなかうまくいきもしませんし、また国民が迷惑する結果になるのであります。なおあと九日ばかり残されておりますから、ひとつもう少し踏んばってこの点を明らかにしていただきたい。きょうの御答弁は一つも私どもを首肯させていない。国民もあなた方の御答弁には満足しておりません。国民の信頼を失うくらい危険なものはないのであります。こういうことを申し上げまして、とにかくいままでお調べになった、これでは不十分ですから、少なくともこの鑑定に関するものだけでもひとつ出していただきたい。これをお願いしまして、私の質問を一応終わることにします。 ○賀屋国務大臣 志賀さんに御納得いただけないのはまことに遺憾でございます。私どもは国民の信頼を失っていないし、この上一番それを重大に考えまして、ほんとうに善処するつもりでございます。