Tag Archives: 下山油

下山事件: 諸永裕司氏のレトリック その5

『葬られた夏 追跡 下山事件』『葬られた夏 追跡 下山事件』

「諸永氏のレトリック」最終回です。ネタとしてはまだまだありますけど、キリがないし個人攻撃をしているように取られるのもイヤなので、この辺でいったん終了とさせていただきます。

本題に入って今回引用した画像についてですが、まず、そもそもの問題として、どうして「東大法医学教室の主任教授だった古畑」が色素の鑑定を担当したことになっちゃうんでしょうか。東大裁判化学教室や秋谷教授はどこに行っちゃったんでしょうか。その前のページ(133ページ)にも「この油について東大法医学教室が調べたところ、機関車や貨車に使われる鉱物油ではなく、最終的に米ぬか油だとわかった」となっていますが、医学部に所属する法医学教室が、なんで死体じゃなくて油の分析や鑑定をやらなきゃいかんのでしょうか。133ページの最初にはちゃんと「警視庁から東大裁判化学教室に持ち込まれた下山の衣類には」云々とあるんですが、どっかで法医学教室と裁判化学教室が入れ替わってしまったようです。

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下山事件: 「秋谷鑑定」 その5

文藝春秋 昭和48年8月号文藝春秋 昭和48年8月号

先のエントリまでで見てきたように、この「秋谷鑑定」と称するものは東大裁判化学教室の秋谷教授が書いたものではないと考えます。では、誰が書いたものでしょうか。

そのヒントになる記述が、「文春秋谷鑑定」の冒頭(その前にある文章は松本清張氏の紹介文で、網掛けの囲みのところからが「文春秋谷鑑定」の本文になります)にあります。「尚以上の鑑定並びにこれに付随する物件の調査…(中略)…については地検、警視庁捜査二課或は化学関係監督官庁の協力活動が行われた。」となっています。

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下山事件: 「秋谷鑑定」 その4

『下山事件全研究』より 植物油の混入について『下山事件全研究』より 植物油の混入について

以前のエントリで引用した「文春秋谷鑑定」に関する疑問の続きです。当該の「文春秋谷鑑定」において、「D51-651油は少し値数が高いので鉱油であるか否かを鹼化値測定によって判断した。その結果はわずか一・八で現れ0に等しいことを認めた」という記述があります。当方も化学の専門家ではありませんが、いろいろな書籍を見る限り鉱物油であれば鹼化値は0、植物油であれば100~200という数値になるのは確かなようです。

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下山事件: 「秋谷鑑定」 その3

『下山事件全研究』p.322より『下山事件全研究』p.322より

では、実際のところ蒸気機関車の下にはどの程度の油が存在するのでしょうか。

佐藤一氏が実際にとりあえず5台のD51(下山総裁を轢断したのと同型)の下に実際にもぐりこんで、布で抑えてしみだした油だけをとる方法で抽出した油の量でも51~97gであり、これだけでも明らかに「文春秋谷鑑定」の「4.5cc」がウソであることがわかります。また、この方法では下面にべっとりとついた油を含んだ泥の塊は拭き取っていないため、そういった油泥に含まれる油まで考慮すると、「車輛底部のあらゆる個所」を拭いて得られる油の総量は「おそらく『4.5cc』(約4g)の200倍をはるかにこえる量」、つまり最低でも1リットル程度と推定しています。

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下山事件: 「秋谷鑑定」 その2 4.5ccって…

「下山事件全研究」より。下山総裁を轢断したD51-651「下山事件全研究」より。下山総裁を轢断したD51-651

文藝春秋 昭和48年8月号文藝春秋 昭和48年8月号

「文春秋谷鑑定」で最もわかりやすい疑問点が、「蒸気機関車であるD51の下面にはどれほどの油が存在するか?」 という点です。

「文春秋谷鑑定」では、「車輛底部のあらゆる個所を拭いて得た油量」が「4.5cc」と傍点付きで強調されて明記されています。この「4.5cc」という数値は、左上でも「轢断車でつき得る車輛油はD51-651の車底から採取した量4.5ccで判る通り、すこぶる微量である」と再度強調されていることから、ミスプリや勘違いではなく、この「文春秋谷鑑定」の著者(前回書いたようにこの「文春秋谷鑑定」自体がかなり怪しいので、あえて「秋谷教授」と書きません)が本当に4.5ccと考えていたことがわかります。

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