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その他: 徒然草

世にかたりつたふる事、まことはあいなきにや、おほくはみな虚事なり。あるにも過ぎて人はものを言ひなすに、まして年月すぎ、境も隔たりぬれば、言ひたきままに語りなして、筆にも書きとどめぬれば、やがてまた定まりぬ。

(徒然草)

世間で語りつたえる事は、ほんとうの事実はつまらないのか、たいていはみなでたらめだ。人は、事実以上にものごとを言いたてるうえに、まして年月もたち、場所もかけ離れたところだということになると、言いたいほうだいにでっちあげて、文章にまで記録してしまうと、それでもう事実ということになるのだ。

小西甚一『古文研究法』(上記・徒然草の文章の現代語訳)

学生時代の参考書を読み返していたら、非常に含蓄のある言葉が目に付いたので、今更ですが書き留めておきます。狭山事件でも、下山事件でも、津山事件でも、この言葉に当てはまる本や人が容易に思い浮かびます。

「年月すぎ、境も隔たりぬれば、言ひたきままに語りなして、筆にも書きとどめぬれば、やがてまた定まりぬ」
この言葉は、本ブログを続ける限り心に留めておきたいと思います。

 

下山事件: 「黒い潮」

今朝、WOWOWで「黒い潮」が放映されました。視聴しての感想です。

主人公(平正一氏がモデルで、この映画の中でも当初から自殺説で記事を書いていた)の台詞「そりゃうちの記事は面白くないかもしれん。しかし、あやふやな想像や憶測はただの一行だって書いてない。信頼できる報道だけが詰まってるんだよ」というのがこの映画全体のテーマです。他社が他殺説でセンセーショナルな記事を書く中で、経営陣からも「これでは新聞が売れない」という突き上げを食らいながらも、信念を貫いて事実と信じることを報道する主人公、という位置づけです。
最終的には、映画の中でも史実と同様に、捜査当局は自殺説を公式に発表せずにウヤムヤのうちに事件が終了しました。

一つだけ、映画の中で、過去に主人公の妻が流行俳優と心中したという事実、ならびにそのことを巡ってマスコミが徒にセンセーションを煽るような報道を繰り広げたという事実が、主人公が他社の報道を無視して自殺説で記事をとりまとめていく上で影響したような描写がありました。平正一氏にも同様の話があったんでしょうか。あるいは、映画として盛り上げるためのフィクション部分なのでしょうか。下世話ですがちょっと気になります。
この映画はあくまでも井上靖が書いた小説=フィクションが原作なので、この部分はフィクションだろうとは思うのですが。

下山事件: 「黒い潮」WOWOWで放映

WOWOWで、下山事件に題材を取った映画「黒い潮」(井上靖原作)が放映されるそうです。4月22日(火)午前8:00と5月19日(月)深夜5:00(WOWOW2)の2回放映が予定されています。

井上靖は当時毎日新聞の記者だったこともあり、自殺説寄りの内容になっているようです。管理人は未見なので楽しみにしています。

また、WOWOWではここしばらく事件関連の映画の特集をしていたようで、今朝(4月20日朝)も帝銀事件の映画をやっていました(見逃しました…というか最後30分だけ見ました(泣))。こちらも5月3日に再放送があるようなので今度は見逃さないようにしたいと思います。4月24日(木)には松川事件の映画を放映するようです。