Category Archives: 下山事件

下山事件: 死後の筋肉のpH変化について

「死後」「pH変化」でググると、一番上にこんな論文(以下「東北農業研究論文」)が見つかります。

これは、屠殺時に延髄・脊髄を破壊した牛とそうでない牛の筋肉の死後のpH変化を測定した論文です。

このpH曲線が秋谷教授の「標準曲線」と大幅に異なる大きな理由は、以下の2点にあると思われます。

  1. 東北農業研究論文は屠殺後の牛を4℃で保存した結果だが、秋谷教授の実験では25℃ないし30℃で保存していた
  2. 東北農業研究論文においては肉に直接肉のpH測定用プローブを刺してpH測定を行ったのに対し、秋谷教授の実験では肉をすりつぶして水に溶かし、その水のpHを測定した

したがって、曲線の形状が異なること自体を問題にするつもりはありません。

しかし、東北農業研究論文で注目すべきと思われるのは、筋肉の部位、ならびに、延髄・脊髄を破壊したかしなかったか(筋肉に死亡前にストレスを与えたか与えていないか)で、pH変化が大きく異なるという点です。特に、脊髄に近い大腰筋では延髄・脊髄破壊の有無で大きな差が現れています。

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下山事件: pH計について その4

『法医学の話』岩波文庫、古畑種基著『法医学の話』岩波新書、古畑種基著

pH測定の精度をこれまで問題にしてきましたが、では、pH測定で精度が出ないとどのような問題があるのでしょうか。

秋谷教授のpH測定による死亡時刻推定については、すでに下山事件自殺説紹介ブログさんの方で詳細な紹介があります。要するに、秋谷教授の下で実際に実験を担当していた塚元助教授(当時)ですら「あの方法はダメですよ。問題にならないですね」と断言するシロモノだったということです。

にもかかわらず、秋谷教授自身ならびに古畑教授は「20分以内の精度で死亡時刻推定が可能」と断言しています。本当にそうなのでしょうか。手法そのものに対する疑問(他の研究者からの批判)については下山事件自殺説紹介ブログさんの記述をご参照いただくとして、ここでは技術的な問題点を論じたいと思います。

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下山事件: pH計について その3

毎日新聞 昭和25年4月23日付毎日新聞 昭和25年4月23日付

前回書いたY会長のお話と周辺の情報を総合すると、下記のようになります。

  • 「秋谷教室にpH計が入ったのは昭和25年(下山事件の翌年)1月」という毎日新聞の報道とY会長のお話は合致している。(毎日の報道は本日の画像を参照。「今年一月に入って(中略)ガラス電極によるPH測定機をとり入れ同教室の設備を完成」云々という記述がある)
  • 下山事件直後は、『下山事件全研究』での塚元助教授(当時)の証言どおり、試験紙を使っていたと考えられる。
  • 当時、試験紙で0.1単位のpH測定精度を出すことは不可能。
  • 事件の1年後でもまだ秋谷教室ではモルモットの死後のpH変化の測定追試を行っている状態であった。従って、1年前の昭和24年当時に、完全に確立された理論・技術ではなかったと思われる。

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下山事件: pH計について その2

以前ちらっと書いた下山事件とpH計に関するお話を、当時実際に秋谷教室に出入りしていた方から直接聞くことができましたので、記録として残しておきます。

こういう「直接の経験者からの聞き取り」というと、「私の大叔母が……」という話といっしょで、本当かどうか確認しようがないという批判が出るかもしれません。しかし、この方は上場企業の現役会長であり、EDINETあたりで調べていただければ少なくとも人物の実在についてはご確認いただけるのではないかと思います。

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下山事件: pH計

私(管理人)のリアルの世界でのお取引先である某社(東証二部上場企業)について。

先日、その会社の方とお話ししていたら、下山事件で秋谷教授が提唱したpH変化による死亡時刻推定に使われたpHセンサは、その会社の前身の町工場が秋谷教授から依頼を受けて特別に作ったセンサだった(と、同社の社史には書いてある)とのことです。秋谷教授の提唱した手法自体はその後学会等で否定されたようですが、その時の「とにかく高精度なpHセンサを」という依頼に応じるための技術開発が、その会社の基礎になっているとのことです。

いろいろなことがいろいろな分野に影響を与えているんだなあ、と実感しました。

下山事件: 「黒い潮」

今朝、WOWOWで「黒い潮」が放映されました。視聴しての感想です。

主人公(平正一氏がモデルで、この映画の中でも当初から自殺説で記事を書いていた)の台詞「そりゃうちの記事は面白くないかもしれん。しかし、あやふやな想像や憶測はただの一行だって書いてない。信頼できる報道だけが詰まってるんだよ」というのがこの映画全体のテーマです。他社が他殺説でセンセーショナルな記事を書く中で、経営陣からも「これでは新聞が売れない」という突き上げを食らいながらも、信念を貫いて事実と信じることを報道する主人公、という位置づけです。
最終的には、映画の中でも史実と同様に、捜査当局は自殺説を公式に発表せずにウヤムヤのうちに事件が終了しました。

一つだけ、映画の中で、過去に主人公の妻が流行俳優と心中したという事実、ならびにそのことを巡ってマスコミが徒にセンセーションを煽るような報道を繰り広げたという事実が、主人公が他社の報道を無視して自殺説で記事をとりまとめていく上で影響したような描写がありました。平正一氏にも同様の話があったんでしょうか。あるいは、映画として盛り上げるためのフィクション部分なのでしょうか。下世話ですがちょっと気になります。
この映画はあくまでも井上靖が書いた小説=フィクションが原作なので、この部分はフィクションだろうとは思うのですが。

下山事件: 「黒い潮」WOWOWで放映

WOWOWで、下山事件に題材を取った映画「黒い潮」(井上靖原作)が放映されるそうです。4月22日(火)午前8:00と5月19日(月)深夜5:00(WOWOW2)の2回放映が予定されています。

井上靖は当時毎日新聞の記者だったこともあり、自殺説寄りの内容になっているようです。管理人は未見なので楽しみにしています。

また、WOWOWではここしばらく事件関連の映画の特集をしていたようで、今朝(4月20日朝)も帝銀事件の映画をやっていました(見逃しました…というか最後30分だけ見ました(泣))。こちらも5月3日に再放送があるようなので今度は見逃さないようにしたいと思います。4月24日(木)には松川事件の映画を放映するようです。

津山事件: 下山事件: 新風舎と草思社が民事再生法適用を申請

新風舎が民事再生法適用申請

草思社が民事再生法適用申請

『謀殺 下山事件』の文庫本を出していた新風舎が2008年1月7日付で民事再生法適用を申請したのに続いて、1月9日付で『津山三十人殺し』の単行本版の版元である草思社が民事再生法適用を申請したとのことです。相次ぐ民事再生法適用申請で、この手の良質なノンフィクション書籍を出していた出版社が相次いで事実上倒産するあたりに時代の流れを感じます。

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