津山事件: 「妻 殺戮」 その2

最近、「不思議ナックルズ VOL.15」に「津山三十人殺し 七十年目の真実」という記事が、「漫画実話ナックルズ」増刊Vol.8 THE WORSTに「津山30人殺し 隠された血の宿命」と題する記事が相次いで掲載されました。

いずれもかなりやっつけな記事(「ナックルズ」にやっつけじゃない記事を求める方が間違ってるというツッコミは置いておいて)ですね。細かいところの間違いを指摘するときりがないので、大きいところだけ書いておきます。

まず「不思議ナックルズ」の記事から。

「これ以上道が細くなるとまずいっすね。ちょっと運転に自身ないっす」道は山の中に入っていた。地名を表す道標に「平山」とある。

「平山」というのは赤磐市平山だと思います。岡山市にも平山という地名はありますが、「山奥」ではありません。なんで岡山市から津山に行くのにこんなところを通ってるんでしょ。そもそも、岡山から津山に抜けるなら普通にJR津山線沿い(旭川沿い)の国道53号線をずっと走っていけばいいだけで、「抜け道」というほどのこともありません。単に道に迷っただけじゃないの?カーナビ使ってなんで迷うんだか。湯郷温泉に泊まるために赤磐市を抜けたのならまだわかるのですが、その後の描写だと岡山市内に戻って泊まったみたいだし、わけがわかりません。

川沿いの道をさらに走ると加茂駅前・行重に辿り着く。

加茂駅前は大字桑原で、行重はもっと先です。また、「川沿いの道をさらに走ると」加茂駅前にはたどり着きません(爆笑)。美作加茂駅は「川沿いの道」(県道6号線)からはちょっと路地を入ったところにあります。さらに、川沿いの道では行重にもたどり着きません。上の平山を通ったという件と併せて、本当にに行って取材したのかを疑わせる描写です。

「ここから先、ナビが出ませんよ。もっと先に進みますか?」確かに行重まではナビゲーション表示されているが、その奥にあるは出てきていない。これはいったいどういうことか?

単に、行政区分としては大字の行重までしか地名として認識されていないということだと思います。貝尾は字(小字)なのででも表示されないことの方が多く、それは、「青山」とかの周辺の字も一緒です。

「この先に行っても脱輪するだけですよ」

んなこたーない(タモリ風)。貝尾までの道は広くはありませんが普通の舗装された道で、夜+霧で視界が利かないと言っても脱輪する危険があるほどの道路ではありません。なら脱輪の危険もあるでしょうけど。
貝尾への道貝尾への道

それから、都井睦雄のとして掲載されている写真が『明治・大正・昭和・平成 実録殺人事件がわかる本』で出ていた写真と同じ石でした。
…実録殺人事件がわかる本と同じ石実録殺人事件がわかる本と同じ石
以前の不思議ナックルズとの整合性くらい取っておいてほしいものです。

結論として、おそらくこの記事は現地に行かずに書いたものだと思います。写真とかは以前に撮影したものを使い回したんでしょう。

「漫画実話ナックルズ増刊」の方について。

昭和拾参年伍月廿一日 

「妻 殺戮」については前のエントリを参照してください。また、被害者の墓のエントリの写真を見ていただければわかるとおり、普通は墓の命日の表記に大字(ここでは「おおあざ」じゃなくて「だいじ」。「拾参」「伍」などの漢数字表記のこと)は使いません。大字というのは有価証券などで改ざんのおそれがあるときに使われるものであって、墓の命日をわざわざ改ざんしようとする奇特な人間はいないからです。また、大字を使うと画数が多くなるので墓石屋に払う額が高くなるという理由もあります。そもそも、大字で書くなら「昭和拾参年伍月弐拾壱日」でしょ。「昭和拾参年伍月廿一日」という表記自体がありえないということくらいは、表現でメシを食う人なら知っててほしいものです。これだけでもこのマンガが現地取材をせずに(実際の墓を見ずに)描かれたものであることが断言できます。

電柱の電線を切断する描写

このマンガの絵だと本線を切っちゃってますね。これだと貝尾だけじゃなくて他の地域も停電するため、すぐに電力会社の係員が来て直してしまう危険性があります。実際には都井睦雄は本線は残したまま支線だけを切断して、貝尾部落のみを停電状態にしています。

「お姉さんは最近まで生きてらして、あの地域でうどん屋をやっていたそうよ」

お姉さんがうどん屋をやっていたのは「あの地域」ではありません。津山の中心部に近いところ(津山駅から車で10分くらい)です。だいいち、貝尾や行重でうどん屋をやって経営が成り立つわけがありません。

津山事件に関する過去のエントリはこちら

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